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発信のネタ出し

「良眠」と書いたその時間、何を見ていましたか? — 夜間巡視の睡眠記録を、見えたことで残す言い換え

結論、「良眠」は巡視で見えた様子を書き手がまとめた判断で、何時に何を見たかが残りません。厚生労働省の睡眠ガイドが床上時間と睡眠時間を分けている点を踏まえ、巡視の時刻・姿勢・見えた様子・本人の言葉・対応の5つで夜間の記録を書く方法を整理しました。

執筆: けありんぐ編集部(介護福祉けありんぐ 編集部)

夜の介護施設で、介護職員が居室の扉を少し開けて、ベッドで休む利用者の様子を静かに確かめているイラスト

「良眠」と書いたその時間、何を見ていましたか? — 夜間巡視の睡眠記録を、見えたことで残す言い換え

要点

  • 「良眠」は、巡視で見えた様子を書き手がまとめた判断の言葉です。 何時に、何を見て「よく眠っている」と判断したのかが、記録からは読み取れません。
  • 厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、床に入っている時間(床上時間)と、実際に眠っている時間(睡眠時間)を分けて扱っています。巡視で見えるのは、寝床での様子までです。
  • 夜間の記録は、①巡視の時刻 ②姿勢と場所 ③目・呼吸・体の動きなど見えた様子 ④起きていたときの行動と本人の言葉 ⑤職員の対応の5つで書きます。翌朝の本人の言葉も、別の行で残します。
  • 眠れているかどうかの評価や原因の推測は、記録の中で決めません。いつもと違う様子は、職場の手順に沿って看護職などに伝えます。

「22時〜6時、良眠」。夜勤明けの記録で、いちばん短く書ける一行かもしれません。何も起きなかった夜ほど、こう書きたくなります。

ただ、この一行を日勤の職員が読んでも、分かるのは「夜勤者が、よく眠っていたと判断した」ことだけです。巡視が何時だったのか、そのとき目を閉じていたのか、寝返りを打っていたのかは、書いた人の記憶にしか残っていません。

けありんぐではこれまで、「不穏」、「拒否」、「暴言」、「帰宅願望」と、記録でよく使われる言葉を1語ずつ取り上げてきました。今回の「良眠」は、ほかの4語と違って、困りごとではなく「問題がなかった」ことを表す言葉です。問題がない夜の記録ほど中身が薄くなりやすいので、この記事では夜間巡視の睡眠記録に絞って、何を書けば次の勤務者が使える記録になるかを整理します。睡眠障害や薬の説明はしません。

「良眠」の一行では、何が伝わらないのか?

伝わるのは、書き手が「よく眠っている」と判断した結論だけです。判断の根拠になった時刻と様子が抜けるため、ほかの夜と比べることができません。

「良眠」という言葉そのものは、使ってはいけない言葉ではありません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」にも、「夜間の良眠を妨げる」という言い方で出てきます。

記録で困るのは、「良眠」が観察の結果ではなく、観察を要約した判断になっている点です。たとえば次の2つの夜は、どちらも「良眠」と書かれる可能性があります。

  • 0時と3時の巡視でいずれも目を閉じて横になっており、規則的な寝息が聞こえた夜
  • 0時の巡視では目を閉じていたが、3時の巡視では目を開けて布団をかけ直しており、その後の巡視で再び目を閉じていた夜

1行目と2行目では、夜の過ごし方が違います。「良眠」と書いた時点で、この違いは記録から消えます。1週間分の記録を並べたときに、「最近、3時ごろに目を覚ましていることが増えた」という変化に気づく手がかりもなくなります。

なぜ巡視だけでは「眠っている」と言い切れないのか?

巡視で見えるのは、寝床にいる・目を閉じている・呼吸の様子といった外から見える状態です。眠っているかどうか、休めたかどうかは、外からは確かめきれません。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月、健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会)は、睡眠を考えるうえで次の2つを分けています。

  • 床上時間:床に入っている時間
  • 睡眠時間:実際に眠っている時間

ガイドの高齢者版は、自分の睡眠状態を1週間記録してみるときのポイントとして、この2つを区別することを挙げています。床に入っていても、寝つくまでに時間がかかったり、途中で目が覚めたりしている時間があるからです。

さらにガイドは、「睡眠休養感」(睡眠で休養がとれている感覚)を睡眠の質を反映する指標として挙げ、朝目覚めたときの睡眠休養感は良い睡眠の目安になると説明しています。一方で、本人が自覚する睡眠時間は床上時間を反映しやすく、やや不正確である可能性にも触れています。

記録を書く立場に置き換えると、ここから2つのことが言えます。

  1. 巡視の記録に書けるのは、床上での様子です。目を閉じて横になっていても、眠っているとは限りません。
  2. 「よく眠れたか」は、本人の感覚の問題でもあります。翌朝の本人の言葉は、巡視の観察とは別の情報として価値があります。ただし本人の言葉だけで夜の様子を決めることもできません。

そのため、観察と本人の言葉は混ぜずに、別々の行に残します。

夜間巡視の記録には、何を書けばいいのか?

①巡視の時刻 ②姿勢と場所 ③目・呼吸・体の動きなど見えた様子 ④起きていたときの行動と本人の言葉 ⑤職員の対応、の5つです。眠っていた時間帯は③までで十分です。

「22時〜6時良眠」という一行の記録と、0時・3時・5時の巡視ごとに時刻・姿勢・見えた様子・本人の言葉・対応を書き分けた記録を上下に並べ、翌朝の本人の言葉を別の行で残す例を示した図解

5つの項目は、次のように使います。

項目書くこと記入例
①巡視の時刻何時に部屋を見たか0時、3時、5時
②姿勢と場所どこで、どんな姿勢だったかベッド上で右側を下にして横になっている
③見えた様子目、呼吸の音、体の動き、布団の状態目を閉じ、規則的な寝息が聞こえる。布団は肩までかかっている
④起きていたときの行動と本人の言葉何をしていたか、何と言ったか3時、ベッドに腰かけている。「トイレに行きたい」と話される
⑤職員の対応何をして、そのあとどうなったかトイレまで付き添い、3時15分に臥床。3時40分の巡視時は目を閉じている

この記入例は説明用に作った場面で、実在の方の記録ではありません。自分の職場の記録様式に置き換えて確かめてください。

この5つで書くと、冒頭の「22時〜6時、良眠」は、たとえば次のように変わります。

  • 言い換え前:「22時〜6時、良眠」
  • 言い換え後:「0時、ベッド上で目を閉じ、規則的な寝息あり。3時、ベッドに腰かけており『トイレに行きたい』と話される。付き添い、3時15分に臥床。3時40分・5時は目を閉じて横になっている」

文字数は増えますが、日勤の職員は「3時ごろに一度トイレで起きた」ことを知ったうえで1日を始められます。

翌朝の本人の言葉は、別の行で残す

起床時に「よく眠れましたか」と声をかけたときの返事は、そのまま引用して残します。「よく寝た」「夜中に何度も目が覚めた」「眠れなかった」など、本人の言葉は巡視の記録と食い違うことがあります。

食い違ったときも、どちらかに合わせて書き直す必要はありません。「巡視時はいずれも閉眼していたが、起床時に『あまり眠れなかった』と話される」と両方を残せば、読み手は両方を材料にして考えられます。

「入眠」「良眠」「不眠」は、どう書き分ければいいのか?

言葉を選ぶより先に、根拠になった観察を添えます。職場で決めた用語があればそれに従い、用語のあとに時刻と様子を続けます。

「入眠」「良眠」「浅眠」「不眠」などの使い分けは、職場によって意味の幅があります。同じ「入眠」でも、目を閉じた時点を指す人もいれば、寝息が聞こえ始めた時点を指す人もいます。言葉の定義をそろえるより、言葉のあとに観察を書くほうが、誰が読んでも同じ場面を思い浮かべられます。

言葉だけの記録観察を添えた記録
22時入眠22時消灯。22時半の巡視時、目を閉じて横になり、呼びかけはしていない
良眠0時・3時の巡視時、いずれも目を閉じて規則的な寝息あり
浅眠1時・3時の巡視時、目は閉じているが寝返りが多く、布団がベッドの下に落ちていた
不眠1時・3時の巡視時に目を開けており、3時に「眠れない」と話される

「不眠」は、病名のように読まれることがあります。記録では「眠れない、と話される」「目を開けていた」と見えたことと聞こえたことを書き、眠れない状態が続いているかどうかの判断は、看護職や医師にゆだねます。医療的な判断を言い切らない書き方は、介護の発信で「治る」と書いていいかでも扱っています。

夜の記録は、日中のケアにどうつながるのか?

夜の記録と日中の記録を並べると、昼寝の時間や日中の過ごし方と夜の様子の関係を、チームで見直す材料になります。

前出の睡眠ガイドは高齢世代について、長い昼寝は夜間の良眠を妨げる原因になりうるため日中の長時間の昼寝は避けること、床上時間が8時間以上にならないことを目安にすることを推奨しています。ガイドは国民全体の健康づくりのための資料で、施設で暮らす一人ひとりにそのまま当てはめるものではありません。それでも、夜に何時ごろ目を覚ましているのか、日中にどのくらい横になっていたのかが記録に残っていれば、チームで生活の流れを考えるときの手がかりになります。

このとき役に立つのは、夜勤の記録に残った「時刻」です。「良眠」の一行からは、昼寝との関係も、目を覚ます時間帯の変化も読み取れません。日中の過ごし方を変えるかどうかは、本人の希望や体調を踏まえてケアマネジャーや看護職を含むチームで決めることです。夜勤者の役割は、その話し合いの材料を残すことです。

言い換えようとして、つまずきやすいのはどんな書き方か?

「特変なし」でまとめる、巡視していない時間帯まで書いてしまう、薬の効果を記録の中で判断してしまう——この3つです。

つまずき1:「特変なし」「良眠」でまとめる

何も起きなかった夜でも、巡視の時刻と見えた様子は1行ずつ残します。「0時・3時・5時、いずれも目を閉じて横になっている」と書けば、変化がなかったことが根拠つきで伝わります。

つまずき2:見ていない時間帯まで「良眠」に含める

「22時〜6時、良眠」と書くと、巡視の合間も眠っていたように読めます。実際に見たのは巡視の時点だけです。見ていない時間帯のことは書かず、巡視した時刻だけを並べます。

つまずき3:薬の効果を記録の中で判断してしまう

「眠剤が効いて良眠」のように、薬と睡眠を結びつけた書き方は、書き手の推測が事実のように読まれるおそれがあります。服薬した時刻と、そのあとの巡視で見えた様子を事実として書き、薬の効き方の評価は看護職や医師に任せます。いつもと違う様子があったときは、職場の手順に沿って伝えてください。

事実と考えを分けて書く方法は、ヒヤリハット報告書で「事実」と「推測」を分ける方法で詳しく整理しています。

夜勤の記録から、どう発信につなげればいいのか?

巡視のときに気をつけていることや、起こさずに様子を確かめる工夫は、夜勤をする人どうしで共有しやすい題材です。個人が特定される情報は外して書きます。

夜勤の巡視には、記録には残らない工夫がたくさんあります。たとえば次のようなことです。

  • 足音や扉の音を立てないために、していること
  • 懐中電灯の光を顔に当てずに、呼吸の様子を確かめる方法
  • 3時ごろに目を覚ましやすい方に、どう声をかけているか

こうした工夫を言葉にすると、同じ時間帯に一人で巡視をしている誰かの手がかりになります。

  • 言い換え前:「夜勤の巡視、起こさないように気をつけています」
  • 言い換え後:「巡視のときは扉を半分だけ開けて、廊下の明かりで布団の上下を見るようにしています。顔に光を当てると目を覚ます方がいたので、この方法に変えました」

後者には、何をしているか、なぜそうしたかがそろっています。読み手は自分の職場で試せるかを判断できます。

発信では、記録の文面をそのまま使わず、場面を一般化して書きます。巡視の時刻、居室の配置、夜勤の人数などが組み合わさると、施設や個人が特定されることがあります。書き方の目安は、個人が特定されない書き方の5つの自衛ルールで整理しています。

まとめ:夜勤の記録で持ち帰れること

  • 「良眠」は観察を要約した判断の言葉で、何時に何を見たかが記録に残らない
  • 厚生労働省の睡眠ガイドは、寝床にいる時間(床上時間)と実際に眠っている時間を分けて扱っている。巡視で見えるのは床上の様子まで
  • 夜間の記録は、①巡視の時刻 ②姿勢と場所 ③見えた様子 ④起きていたときの行動と本人の言葉 ⑤職員の対応、の5つで書く
  • 翌朝の本人の言葉は別の行で残し、眠れているかの評価や薬の効き方の判断は看護職などにゆだねる

次の夜勤で、巡視1回分だけでいいので、「良眠」と書く前に時刻と見えた様子を1行で書いてみてください。それが1週間分たまると、夜の変化を見つけるための記録になります。

日中の記録でよく使う言葉は、介護記録の「不穏」はどう言い換える?、「拒否」とだけ書いていませんか?、「帰宅願望あり」とだけ書いていませんか?で1語ずつ取り上げています。

参考資料

  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月、健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会。令和6年9月18日一部修正版)(厚生労働省公開PDF)

2026年10月6日に内容を確認しています。

よくある質問

A. 禁止ではありません。厚生労働省の睡眠ガイドにも出てくる言葉です。ただ「良眠」は巡視で見えた様子を書き手がまとめた判断なので、それだけでは何時に何を見たのかが伝わりません。言葉のあとに、巡視の時刻と見えた様子を添える書き方が目安です。

A. ①巡視の時刻、②姿勢と場所、③目・呼吸・体の動きなど見えた様子、④起きていたときの行動と本人の言葉、⑤職員の対応とその後、の5つです。眠っていた時間帯は③までで十分です。見ていない時間帯のことは書かず、巡視した時刻だけを並べます。

A. 目を閉じて横になっていても、眠っているとは限りません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、床に入っている時間(床上時間)と実際に眠っている時間を区別しています。記録には「目を閉じている」「規則的な寝息が聞こえる」のように、見えたことと聞こえたことを書きます。

A. 本人の言葉はそのまま引用し、巡視の記録とは別の行で残します。巡視時の様子と食い違っても、どちらかに合わせて書き直す必要はありません。両方を残しておけば、チームで考える材料になります。いつもと違う様子が続くときは、職場の手順に沿って看護職などに伝えます。

A. 記録をそのまま転載せず、巡視の時刻、居室の配置、夜勤の人数など、組み合わせると施設や個人が特定される情報を外して書きます。何をしているか、なぜそうしたかをそろえて書くと、同じ時間帯に巡視をしている読み手が自分の職場で試せるかを判断しやすくなります。

この記事を、自分の経験を整理するきっかけに

まずは公開せず、次の3点を手元のメモに書いてみてください。

  1. どんな場面で、何を見たり聞いたりしたか
  2. 自分は何を考え、どんな工夫をしたか
  3. 同じ立場の人に、どんな経験や工夫を聞きたいか

業務記録をそのまま転載せず、利用者・家族・職場が特定される情報を含めない形に整理します。迷う内容は公開前に職場のルールと相談先を確認してください。

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