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発信のすすめ

施設の取り組みを「外」に開く — 介護施設の管理職の発信は、採用・定着・育成にどう関わるのか

結論、ホームページやSNSでの発信だけで応募が増えるとは言えません。令和7年度介護労働実態調査では効果ありの回答は2割台でした。一方、就職理由には人間関係や「やりたい介護」が上位に入ります。管理職が何をどこに書くかを調査データで整理しました。

執筆: けありんぐ編集部(介護福祉けありんぐ 編集部)

施設長がロビーでスマホを手に施設の発信について考えているイラスト

施設の取り組みを「外」に開く — 介護施設の管理職の発信は、採用・定着・育成にどう関わるのか

要点

  • ホームページやSNSでの発信だけで、応募が増えるとは言えません。 令和7年度介護労働実態調査では、事業所ホームページで求職者へ発信している事業所のうち「採用に効果があった」と答えたのは24.4%で、職員への紹介依頼(47.3%)より低い結果でした。
  • 一方で、介護職が今の法人に就職した理由には「職場の人間関係がよさそうだったため」(35.1%)、「自分のやりたい介護ができそうだったため」(34.2%)が上位に入っています。求人票の条件欄では伝わりにくい職場の中身を、言葉にしておく意味はあります。
  • 管理職の発信は、施設名を出す採用広報と、所属を出さずに知見を共有する発信とで、場所と書き方を分けて考えます。
  • 職員に発信を促すときは、ノルマにしない・最初の1本を歓迎する・書いてよい範囲のルールを先に共有する、の3つから始めます。

「求人広告にお金をかけても、なかなか応募につながらない」 「時間をかけて育てた職員が、数年で辞めてしまった」 「うちの現場には良い取り組みがあるのに、外からはまったく見えていない」

施設長・主任・サービス提供責任者といった立場の方は、ケアの質と並んで、人をどう集め、どう育て、どう定着させるかという課題に向き合っています。そのなかで「SNSやブログで発信したほうがいいのでは」と考えたことがある方もいるはずです。

この記事では、発信が採用・定着・育成のどこに関わり、どこには関わりにくいのかを、公益財団法人介護労働安定センターの調査結果をもとに整理します。そのうえで、管理職として何をどこに書くか、職員の発信にどう関わるかを考えます。

発信すれば、応募は増えるのか?

発信だけで応募が増えるとは言えません。調査では、ホームページやSNSでの発信を「採用に効果があった」と答えた事業所は、実施している事業所の2割台でした。

介護労働安定センターの「令和7年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査結果報告書」(2026年7月)は、8,899事業所の回答から、採用活動の実施状況と、そのうち「採用に効果があった」と答えた割合をまとめています。

採用活動実施している事業所うち「採用に効果があった」
職員に対して友人・知人などの紹介を依頼66.0%47.3%
ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談64.8%41.8%
有料職業紹介所を活用37.9%53.4%
事業所ホームページで自事業所のアピールポイントを求職者へ発信36.8%24.4%
SNSを活用して自事業所のアピールポイントを求職者へ発信16.3%27.6%

同じ報告書にまとめられた労働者調査の結果では、介護労働者が今の法人に就職した主な経路は「友人・知人からの紹介」が33.8%で最も多く、「法人又は施設・事業所のホームページ」は2.2%、「法人又は施設・事業所が発信するSNS」は0.2%でした。

この数字から言えるのは、ホームページやSNSを入口にして応募してくる人は、いまのところ多くないということです。「発信を始めれば応募が集まる」という期待で始めると、数か月で手が止まりやすくなります。

それでも、職場の中身を言葉にしておく意味はどこにあるのか?

就職先を選ぶ理由には、人間関係や「やりたい介護ができそうか」が上位に入っています。これは求人票の条件欄では伝わりにくく、言葉にしておかないと誰も説明できない部分です。

同じく労働者調査で、今の法人に就職した理由を尋ねた結果は次のとおりです。

  • 「通勤に便利だから」51.8%
  • 「職場の人間関係がよさそうだったため」35.1%
  • 「自分のやりたい介護ができそうだったため」34.2%

勤続1年未満の人に限ると、「職場の人間関係がよさそうだったため」は41.7%、「自分のやりたい介護ができそうだったため」は40.3%と、全体より高くなっています。

求人票に並ぶのは、勤務時間・給与・休日といった条件です。人間関係やケアの考え方は、見学や面接で話すか、誰かが言葉で説明するまで伝わりません。そして、最も多い就職経路は「友人・知人からの紹介」でした。職員が知人に「うちはこういう職場」と説明するときに、その言葉の元になる文章があるかどうかは、管理職が手を入れられる部分です。

ここで言う発信は、応募を集める広告というより、職場の中身を説明するための言葉を、外に出せる形で用意しておくことです。見学に来た人に渡す資料、面接で話す内容、職員が知人に見せられるページは、どれもその言葉から作れます。発信によって応募が増えるかどうかは、職場ごとに確かめるしかありません。

外に向けて書くと、組織の中では何が起きるのか?

外の人に伝わる形で書こうとすると、「なぜこのやり方なのか」を説明する必要が出てきます。その説明が、職員どうしで考え方をそろえる材料になります。

施設の取り組みを外向けに書こうとすると、次のような作業が発生します。

  • 「なぜこのケアをこの手順でやっているのか」を、知らない人にも分かる言葉で説明する
  • 暗黙のうちに行っていた判断を、文章にする
  • 「うちの強みは何か」を、職員と話し合う

前出の事業所調査では、職場定着・離職防止の方策として「介護の質の向上を図るための価値観や行動基準の共有」を行っている事業所が53.1%あり、そのうち30.5%が「職場定着に効果があった」と答えています。「現場の裁量による創意工夫を尊重するマネジメント」は43.1%が実施し、34.1%が定着に効果があったとしています。

この調査は発信そのものの効果を尋ねたものではありません。ただ、外向けに書く過程で行う「考え方を言葉にしてそろえる」作業は、これらの方策と重なる部分があります。発信を、こうした取り組みの手段の一つとして位置づけることはできます。

現場の知恵を個人の経験のまま埋もれさせない意義については、現場の知恵を「業界の資産」に変える — 介護福祉プロが今こそ発信を始めるべき5つの理由でも整理しています。

定着にはどう関わるのか?

調査で定着に効果があったと答えた割合が高いのは、休暇の取りやすさや人間関係の良い職場づくりです。発信はそれらの代わりにはならず、職員が自分の仕事を振り返る機会として関わります。

事業所調査で「職場定着に効果があった」と答えた割合が高かったのは、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」(57.9%)、「人間関係が良好な職場づくり」(54.6%)でした。定着の土台は、働き方と人間関係です。発信を始めても、ここが整っていなければ定着にはつながりません。

そのうえで、職員が自分の取り組みを書く機会には、次のような面があります。

  • 自分の判断やケアの工夫を言葉にすることで、経験を振り返れる
  • 書いたものに同業者から反応があると、自分の仕事が誰かの役に立つと分かる
  • 何を書けるかを考える過程で、自分のスキルを棚卸しできる

経験を棚卸しして書く手順は、その経験、履歴書に書く前に発信してみませんかで紹介しています。

管理職自身は、何を書けばいいのか?

現場の介護技術より言語化されにくい「マネジメントの判断」が、管理職ならではの題材になります。

施設長・主任クラスの方は、長年の経験のなかで、次のような判断の勘どころを持っています。

  • どんな場面で職員の離職の相談が増えるか
  • 多職種連携でつまずきやすい場面と、その乗り越え方
  • 新人にどの順序で仕事を任せているか
  • 家族からの相談やクレームに、どの段階で誰が関わるか

こうした判断は、施設を異動すれば一緒に失われてしまう知見です。文章にしておけば、自施設の若手リーダー候補が読める教材になり、同じ立場の管理職どうしで比べ合うこともできます。

書くときは、特定の職員・利用者・家族が分かる書き方を避け、場面を一般化します。管理職の発信は、職員から見ると「上司が書いたもの」として読まれます。特定の人の評価に読める書き方は、どれだけ伏せても避けてください。

施設名を出す発信と、所属を出さない発信は、どう分ければいいのか?

採用につなげたい発信は、施設名を出す自施設のホームページやSNSで。所属を出さずに知見を共有したい発信は、匿名で書ける場で。目的が違うので、書く場所と書いてよい範囲を分けます。

施設の発信を、施設名を出して採用や見学に向けて書く「自施設のホームページ・SNS」、所属を出さずに同業者と知見を共有する「匿名で書ける場(介護福祉けありんぐ等)」、職員どうしで手順や判断を残す「施設内の資料」の3つに分け、それぞれの目的・書く人・書いてよい範囲を並べた図解

書く場所目的書く人書いてよい範囲の決め方
自施設のホームページ・SNS求職者や見学希望者に職場の中身を伝える施設として決めた担当者法人の広報ルール・就業規則に沿う
匿名で書ける場同業者と知見を共有する書きたい職員・管理職個人施設や個人が特定されない範囲
施設内の資料職員どうしで手順や判断の理由を残す現場の職員・リーダー施設内の情報管理のルールに沿う

介護福祉けありんぐは、職種と経験年数を添えて、所属を出さずに書ける場です。施設名を出して求職者に向けて書く採用広報の場ではありません。採用につなげたい発信は自施設のホームページやSNSで行い、けありんぐでは知見の共有に使う、という分け方をおすすめします。

施設名を出さない発信でも、就業規則の守秘義務や個人情報の扱いには注意が必要です。職員に発信を勧める前に、あなたの発信、特定されていませんか? — 介護職が安心して書き続けるための5つの自衛ルールのような書き方の目安を、職場のルールとして共有しておくと、職員も管理職も判断に迷いにくくなります。

職員に発信を促すとき、管理職は何に気をつければいいのか?

ノルマにしない、最初の1本を歓迎する、書いてよい範囲を先に決めておく。この3つです。

業務として課さない

発信をノルマにすると、書くこと自体が負担になります。書きたい人が、書きたいときに書ける状態にしておき、書かない職員を評価で不利にしないことを明言しておきます。

完璧を求めず、最初の1本を歓迎する

「ちゃんとした記事を書かなければ」と思わせると、誰も書き始められません。500文字でも、ひとつの工夫を書いただけでも、読んだ同業者には手がかりになります。1本目を書いた職員には、内容への具体的な感想を伝えます。

書いてよい範囲を、先に決めておく

職員が迷うのは「何を書けばいいか」より「どこまで書いていいか」であることが少なくありません。利用者・家族・同僚が特定される情報を書かない、施設名を出すかどうかは法人のルールに従う、迷ったら誰に聞くか。これを先に決めておくと、職員は安心して書き始められます。

管理職自身が書き、職員の発信を読んで反応することも、職員にとっては「書いてよい」という合図になります。

まとめ:管理職の発信について持ち帰れること

  • ホームページやSNSでの発信を「採用に効果があった」と答えた事業所は、実施している事業所の2割台。発信だけで応募が増えるとは言えない(令和7年度介護労働実態調査)
  • 就職理由には「人間関係がよさそう」「やりたい介護ができそう」が上位に入る。求人票では伝わりにくい職場の中身を言葉にしておく意味はある
  • 定着の土台は休暇の取りやすさと人間関係。発信はその代わりにはならず、職員が仕事を振り返る機会として関わる
  • 施設名を出す採用広報と、所属を出さない知見共有は、書く場所と書いてよい範囲を分ける

まずは、職員が知人に職場を説明するときに使えそうな「うちのケアで大事にしていること」を、3行だけ書き出してみてください。それが、ホームページの文章にも、見学時の説明にも使える元になります。

介護福祉けありんぐへのご質問・取材・業務提携のご相談は、お問い合わせから受け付けています。

参考資料

  • 公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査結果報告書」2026年7月(介護労働安定センター公開PDF)

2026年10月6日に内容を確認しています。

よくある質問

A. 発信だけで応募が増えるとは言えません。令和7年度介護労働実態調査では、事業所ホームページで求職者へ発信している事業所のうち「採用に効果があった」と答えたのは24.4%、SNSでは27.6%でした。職員への紹介依頼(47.3%)や有料職業紹介所の活用(53.4%)より低い割合です。

A. 同じ調査で、介護職が今の法人に就職した理由には「職場の人間関係がよさそうだったため」(35.1%)、「自分のやりたい介護ができそうだったため」(34.2%)が上位に入っています。求人票の条件欄では伝わりにくい職場の中身を言葉にしておくと、見学時の説明や、職員が知人に職場を紹介するときの元になります。

A. 離職の相談が増える場面、多職種連携でつまずきやすい場面、新人に仕事を任せる順序など、マネジメントの判断の勘どころが題材になります。特定の職員・利用者・家族が分かる書き方は避け、場面を一般化して書きます。

A. 介護福祉けありんぐは、職種と経験年数を添えて所属を出さずに書ける場で、施設名を出して求職者に向けて書く採用広報の場ではありません。採用につなげたい発信は自施設のホームページやSNSで行い、けありんぐは同業者との知見の共有に使う、という分け方をおすすめします。

A. 業務として課さないこと、完璧を求めず最初の1本を歓迎すること、書いてよい範囲を先に決めておくことの3つです。利用者・家族・同僚が特定される情報を書かない、施設名を出すかは法人のルールに従う、迷ったら誰に聞くかを先に共有しておくと、職員は書き始めやすくなります。

この記事を、自分の経験を整理するきっかけに

まずは公開せず、次の3点を手元のメモに書いてみてください。

  1. どんな場面で、何を見たり聞いたりしたか
  2. 自分は何を考え、どんな工夫をしたか
  3. 同じ立場の人に、どんな経験や工夫を聞きたいか

業務記録をそのまま転載せず、利用者・家族・職場が特定される情報を含めない形に整理します。迷う内容は公開前に職場のルールと相談先を確認してください。

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