「特変なし」とだけ書いていませんか? — 変わりがない日の介護記録に、確かめたことを残す言い換え
結論、「特変なし」「お変わりなし」は使ってもかまいませんが、それだけでは何を確かめて変わりないと判断したかが残りません。食事・水分・排泄・過ごし方・本人の言葉のうち確かめた項目を、量と時刻で1行ずつ書き添える方法と、つまずきやすい3つの書き方を整理しました。
執筆: けありんぐ編集部(介護福祉けありんぐ 編集部)

「特変なし」とだけ書いていませんか? — 変わりがない日の介護記録に、確かめたことを残す言い換え
要点
- 「特変なし」「お変わりなし」は、確かめた結果をまとめた言葉です。それだけでは、何を見て「変わりない」と判断したのかが記録に残りません。
- 変化がない日の記録は、食事・水分・排泄・過ごし方・本人の言葉のうち、実際に確かめた項目を、量と時刻で1行ずつ書きます。
- 「ほぼ全量」「落ち着いている」のように、別のまとめ言葉に置き換えるだけでは言い換えになりません。確かめていない項目を「変わりなし」に含めないことも大切です。
- 職場で「特変なし」を使う決まりがある場合は、その決まりに従い、言葉のあとに確かめた項目を添えます。体調の良し悪しの判断は、気づいたことを看護職などに伝えてチームで行います。
勤務の終わりに記録を開いて、今日は何も起きなかったなと思いながら「特変なし」と打つ。申し送りでも「〇〇さん、お変わりありません」で終わる。忙しい日ほど、こうした一行で済ませたくなるものです。
けありんぐではこれまで、「不穏」、「拒否」、「暴言」、「帰宅願望」、夜間巡視の「良眠」と、記録でよく使う言葉を1語ずつ取り上げてきました。今回の「特変なし」は、ほかの言葉と違って、何かが起きたことではなく、何も起きなかったことを書く言葉です。この記事では、日中の記録と申し送りに絞って、変化がない日に次の勤務者が読んで「いつもどおりだった」と確かめられる記録には何が要るかを整理します。病気や症状の見分け方は扱いません。
「特変なし」の一行では、何が伝わらないのか?
伝わるのは、書き手が「いつもと変わらない」と判断した結論だけです。何を確かめて、何と比べてそう判断したのかが抜けるため、あとから別の日と比べることができません。
公益社団法人かながわ福祉サービス振興会が公開している研修資料「記録の書き方〜自立支援のための記録とは〜」は、介護記録の基本として、5W1Hを意識すること、客観的事実と主観を分けることなどを挙げています。そのうえで、「お変わりありません。」「ほぼ全量摂取」を、具体的にイメージできない曖昧な表現の例として挙げ、こうした書き方は控えるよう説明しています。
たとえば、次の2日は、どちらも「特変なし」と書かれる可能性があります。
- 昼食を残さず食べ、午後の体操に最後まで参加し、「今日は肩が軽い」と話していた日
- 昼食の主食を半分残し、午後は居室で横になって過ごしたが、声をかけると返事はいつもどおりだった日
2つの日は、過ごし方が違います。「特変なし」と書いた時点で、この違いは記録から消えます。1週間分の記録を並べたとき、「最近、昼食を残す日が増えている」という変化に気づく手がかりもなくなります。
「変わりない」と書くには、何と比べればいいのか?
比べる相手は、その人の「いつもの様子」です。いつもの様子が記録に残っていないと、今日が変わりないかどうかは書き手の記憶だけで決まってしまいます。
「変わりない」は比較の言葉です。前の日やふだんの様子という比べる相手があって、初めて意味を持ちます。ところが、毎日の記録が「特変なし」で続いていると、いつもの様子そのものが記録に残りません。比べる相手を書き残さないまま、比較の結論だけを書いている状態です。
いつもの様子を残すには、変化がない日にも、確かめたことを短く書いておくことです。「主食は茶碗に一口分を残し、副食はすべて食べた」という記録が何日か並んでいれば、主食を半分残した日に、それがいつもと違うことに誰でも気づけます。変化に気づくための記録は、変化がない日の記録から作られます。
自分の担当の方について、「いつもの昼食の量」「いつもの午後の過ごし方」を、記録を見ずに答えられるか考えてみてください。答えられない項目があれば、そこが記録に書き足す候補です。
変化がない日の記録には、何を書けばいいのか?
食事・水分、排泄、過ごし方、本人の言葉のうち、その日に実際に確かめた項目を書きます。量は「ほぼ」ではなく何をどれだけ、時間は時刻で書きます。
項目ごとの書き方は、次のとおりです。
| 項目 | まとめた書き方 | 確かめたことを添えた書き方 |
|---|---|---|
| 食事 | ほぼ全量摂取 | 昼食:主食は茶碗に一口分を残し、副食はすべて食べた |
| 水分 | 水分摂取良好 | 10時と15時にお茶を湯のみ1杯ずつ飲み終えた |
| 排泄 | 排泄特変なし | 10時・14時にトイレで排尿。回数と時間帯は前日までの記録と同じ |
| 過ごし方 | 穏やかに過ごす | 午前はデイルームで新聞を読み、午後の体操に参加して最後まで座っていた |
| 本人の言葉 | 機嫌よし | 体操のあと「今日は肩が軽い」と話される |
表の右側は書き方を示すために作った文例で、実在の方の記録ではありません。項目名や書く欄は、自分の職場の記録様式に合わせて置き換えてください。
全部の項目を毎回書く必要はありません。その日に実際に見た項目、その方のケアプランで気をつけることになっている項目を優先します。一行が少し長くなっても、次の勤務者は「今日の昼食はいつもどおりだった」ことを、根拠と一緒に受け取れます。
本人の言葉は、観察とは別の行に残す
「今日は肩が軽い」「別に何もないよ」のような本人の言葉は、そのまま「」で引用して残します。前出の研修資料も、利用者以外から聞いた情報は出どころを書くこと、事実と書き手の考えを区別がつくように書くことを挙げています。本人が「何もない」と話したことと、職員が見て変わりないと判断したことは、別の情報として並べておくと、あとから読む人が両方を材料にできます。
「特変なし」を使う職場では、どう書き足せばいいのか?
職場の決まりで「特変なし」を使う場合は、それに従います。そのうえで、言葉のあとに、確かめた項目を短く添えます。
「特変なし」は、使ってはいけない言葉ではありません。チェック表の欄や、申し送りの定型として使っている職場もあります。前出の研修資料も、職場の方針で専門用語を使って記録する場合は、第三者から説明を求められたときにわかりやすく説明できるよう備えておくことを挙げています。
書き足し方の例です。
- 書き足す前:「日中、特変なし」
- 書き足した後:「日中、特変なし(昼食は主食一口残し・副食すべて、10時と14時にトイレで排尿、午後の体操に最後まで参加)」
括弧の中が、「特変なし」と判断した根拠です。何かいつもと違うことがあった日は、前出の研修資料が挙げる順番、つまり①本人の訴えや行動など起きたこと ②心身の状態 ③職員の対応(根拠と一緒に)④結果、の順で書くと、流れが読み手に伝わります。
言い換えようとして、つまずきやすいのはどんな書き方か?
別のまとめ言葉に置き換えるだけで終わる、確かめていない項目まで「変わりなし」に含める、体調の良し悪しを記録の中で言い切る——この3つです。
つまずき1:別のまとめ言葉に置き換えるだけで終わる
「特変なし」を「落ち着いて過ごされる」「穏やか」に変えても、何を見てそう書いたのかは伝わりません。「落ち着いている」も、書き手の判断をまとめた言葉です。まとめ言葉を使ったら、そのあとに、どこで何をしていたかを1つ書き添えます。まとめ言葉の言い換えは、介護記録の「不穏」の言い換えでも整理しています。
つまずき2:確かめていない項目まで「変わりなし」に含める
「特変なし」と書くと、食事も排泄も表情も、すべて確かめたように読めます。実際には、自分が担当した時間帯に見た項目だけのことがあります。見ていない項目は書かないか、「午後は担当外」のように書いた範囲を示します。
つまずき3:体調の良し悪しを記録の中で言い切る
「体調良好」「元気」のように体調を言い切る書き方は、書き手の判断が事実のように読まれるおそれがあります。記録には、食べた量や過ごし方、本人の言葉を事実として書き、いつもと違うと感じたことは職場の手順に沿って看護職などに伝えます。体調や症状を言い切らない表現の選び方は、医師法に触れかねない言い切り表現と言い換え方にまとめています。
見たことと考えたことの書き分けは、ヒヤリハット報告書の「事実」と「考え」の分け方が参考になります。
変化がない日の記録から、どう発信につなげればいいのか?
「いつもの様子」を記録に残すために職場で工夫していることは、同じ悩みを持つ介護職どうしで共有しやすい題材です。個人が特定される情報は外して書きます。
変化がない日の記録には、書き手ごとの工夫が表れます。たとえば次のようなことです。
- 食事の量を、職員によって読み方が変わらない言葉でそろえるために決めたこと
- 申し送りで「お変わりなし」と言う前に、確認している項目
- 毎日書くのが負担にならないよう、記録様式で変えたこと
こうした工夫を言葉にすると、同じように記録の書き方で迷っている誰かの手がかりになります。
- 言い換え前:「記録はできるだけ具体的に書くようにしています」
- 言い換え後:「『ほぼ全量』と書く代わりに、主食と副食に分けて、残した量を『一口』『半分』で書くことにしました。職員によって『ほぼ』の幅が違っていたからです」
後者には、変えたことと変えた理由の両方が書かれているので、読み手は自分の職場の記録様式でも同じことができるかを考えられます。
記録の文面は、発信にそのまま貼り付けません。食事の内容や日課、居室の様子などが組み合わさると、施設や個人が特定されることがあるため、場面は一般化して書きます。書き方の目安は、個人が特定されない書き方の5つの自衛ルールで整理しています。
まとめ:変化がない日の記録で持ち帰れること
- 「特変なし」「お変わりなし」は確かめた結果をまとめた判断の言葉で、何を見て変わりないと判断したかが記録に残らない
- 「変わりない」と書くには比べる相手が要る。変化がない日にも確かめたことを書いておくと、それが「いつもの様子」の記録になる
- 食事・水分、排泄、過ごし方、本人の言葉のうち、確かめた項目を、量は何をどれだけ、時間は時刻で書く。見ていない項目は含めない
- 職場で「特変なし」を使う場合は決まりに従い、言葉のあとに確かめた項目を添える。体調の判断は看護職などと共有する
次の勤務で、一人分だけでいいので、「特変なし」と打つ前に、昼食の量を「何をどれだけ」で1行書いてみてください。それが数日分たまると、変化に気づくための「いつもの様子」の記録になります。
参考資料
- 公益社団法人かながわ福祉サービス振興会「記録の書き方〜自立支援のための記録とは〜」(研修資料、2022年12月掲載)(かながわ福祉サービス振興会公開PDF)
2026年10月13日に内容を確認しています。
よくある質問
A. 禁止ではありません。チェック表や申し送りの定型として使っている職場もあります。ただ「特変なし」は確かめた結果をまとめた言葉なので、それだけでは何を見て変わりないと判断したのかが残りません。職場の決まりに従ったうえで、言葉のあとに確かめた項目を短く添える書き方が目安です。
A. 食事・水分、排泄、過ごし方、本人の言葉のうち、その日に実際に確かめた項目を書きます。量は「ほぼ」ではなく何をどれだけ、時間は時刻で書きます。全部を毎回書く必要はなく、実際に見た項目と、ケアプランで気をつけることになっている項目を優先します。
A. 主食と副食に分けて、残した量を具体的に書きます。たとえば「主食は茶碗に一口分を残し、副食はすべて食べた」のように書くと、誰が読んでも同じ量を思い浮かべられます。公益社団法人かながわ福祉サービス振興会の研修資料も、「ほぼ全量摂取」を具体的にイメージできない曖昧な表現の例として挙げています。
A. それだけでは言い換えになりません。「落ち着いている」も書き手の判断をまとめた言葉で、何を見てそう書いたのかが伝わらないからです。使う場合は、「午前はデイルームで新聞を読んでいた」のように、どこで何をしていたかを1つ書き添えます。
A. 記録の文面をそのまま転載せず、食事の内容や日課、居室の様子など、組み合わさると施設や個人が特定される情報を外して書きます。何を変えたか、なぜ変えたかをそろえて書くと、読み手が自分の職場で試せるかを判断しやすくなります。
この記事を、自分の経験を整理するきっかけに
まずは公開せず、次の3点を手元のメモに書いてみてください。
- どんな場面で、何を見たり聞いたりしたか
- 自分は何を考え、どんな工夫をしたか
- 同じ立場の人に、どんな経験や工夫を聞きたいか
業務記録をそのまま転載せず、利用者・家族・職場が特定される情報を含めない形に整理します。迷う内容は公開前に職場のルールと相談先を確認してください。



