素敵なコラム紹介 #4|介助のあとに残るもの
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素敵なコラム紹介 #4|介助のあとに残るもの
けありんぐ編集部です。「素敵なコラム紹介」も、今回で第4回を迎えました。約3週間ごとにお届けしているこの連載では、日々たくさん寄せられるコラムのなかから、編集部が心を動かされたものを選んで、あたたかくご紹介しています。
今回のテーマは「介助のあとに残るもの」です。介護の現場でも、在宅での介護でも、目に見える動作そのものと同じくらい、動作が終わったあとに残る何かが大切なのではないか。そんなことを、今回ご紹介する3本のコラムを読みながら考えました。肩に残るこわばり、送迎車を見送ったあとの沈黙、申し送りノートに書かれなかった一行。どれも、介助という行為の「あと」に静かに残っていくものです。
読者のみなさんの毎日にも、きっと似たような瞬間があるはずです。移乗を終えてほっと息をついた瞬間、家族を送り出したあとにふと感じる小さな引っかかり、申し送りを聞きながら「これで大丈夫かな」と思う一瞬。そうした瞬間に、そっと寄り添ってくれるコラムを、今回は3本選びました。
現場で働く方も、ご家族の介護をされている方も、それぞれの立場から「わかる」と感じていただける回になっていると思います。どうぞ、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
移乗のたびに肩がすくむわたしが、勤務の合間にほどいている5つの合図
このコラムは、特養と老健で12年働いてきた理学療法士の方が、更衣室の鏡にふと映った自分の肩を見て気づいたところから始まります。移乗や体位交換を重ねるたびに、無意識のうちにすくんでいく肩。書き手はそれを、勤務の合間にほどくための「5つの合図」として書き残してくれています。
このコラムの良さは、何よりもまず、書き手自身が長年その仕事をしてきたプロフェッショナルでありながら、自分の身体の変化に「そのとき初めて気づいた」と、正直に打ち明けているところにあると思います。専門職としての知識を押しつけるのではなく、自分自身も同じようにすくんだ肩を抱えている一人として書かれている。だからこそ、日々身体を使って利用者さんを支えている介護職員の方の心に、すっと入っていくのではないでしょうか。
特に印象的なのは、「やる気がなくても1つだけ拾える」設計にしてある、という一文です。頑張れる日ばかりではない現場で、それでも続けられる工夫を用意しておく。この視点は、忙しい勤務のなかで自分の身体を後回しにしがちな方にとって、そっと背中を支えてくれるような存在になるはずです。
読み終えたあとに残るのは、「自分の肩も、こわばっているかもしれない」という、静かな気づきだと思います。派手なアドバイスではなく、勤務の合間に拾える小さな合図だからこそ、明日からの現場でふと思い出してもらえる。編集部として、身体を使う仕事をしているすべての方にそっと届けたい一本です。
→ 移乗のたびに肩がすくむわたしが、勤務の合間にほどいている 5 つの合図
デイサービスに「行きたくない」と言っていた父が、将棋盤の前で機嫌が変わった話
こちらは、五十二歳の会社員の方が、脳梗塞で倒れたお父様との通い介護を綴ったコラムです。デイサービスの送迎車を前に「行きたくない」とつぶやいたお父様の姿から始まり、三ヶ月後、自らカレンダーを指さして「今日、行く日だろ」と口にするまでの変化が描かれています。
このコラムの良さは、時間の流れをまっすぐに見せてくれているところだと思います。介護の入り口に立ったばかりの方にとって、「行きたくない」という言葉を受け止めることは、想像以上に重いものです。玄関で見送る背中に不機嫌な沈黙が張り付いていた、という書き手の表現には、多くのご家族が経験してきた戸惑いが、そのまま映し出されているように感じます。
そして同時に、その戸惑いの先に、機嫌が変わっていく瞬間があったことも、静かに伝えてくれています。「みんな優しいから大丈夫だよ」という励ましだけでは届かなかったものが、どんなふうに変わっていったのか。その過程を丁寧にたどっていく筆致に、同じように通い介護をされている方、あるいはこれから始めようとしている方は、きっと自分の状況と重ねながら読み進めることになるでしょう。
読み終えたときに残るのは、「今はうまくいかなくても、変わっていく余地がある」という、ささやかな希望だと思います。ご家族の介護に悩む方の肩の力を、少しだけゆるめてくれるような一本です。
→ デイサービスに「行きたくない」と言っていた父が、将棋盤の前で機嫌が変わった話
夜勤明けの申し送りで、いつも聞かれる「これ、一人でいいんでしたっけ」
このコラムは、特養に15年近く出入りしている理学療法士の方が、申し送りの現場で繰り返し受けてきた質問について書いたものです。「移乗って一人でいいんでしたっけ、二人でしたっけ」という問いかけの奥に、申し送りのどこかで抜け落ちてしまう「大事な一行」があるのではないか、という視点から書き起こされています。
このコラムの良さは、日々の申し送りという、当たり前すぎて見過ごされがちな場面に、丁寧に光を当てているところにあると思います。転倒予防のために気づいた小さな変化を、口頭で伝え、看護師にも共有したにもかかわらず、翌日のノートには前日までと同じ一行しか残っていなかった。この描写は、情報がすり抜けていく瞬間のリアルさを、静かに、しかし確かに伝えてくれます。
特に、経験の浅い職員さんが前の記録だけを頼りに介助を始めようとする場面は、多くの現場で起こりうる状況として、読む人の記憶に強く残るのではないでしょうか。誰かを責める書き方ではなく、「記録に何を残すか」という仕組みの側に目を向けている姿勢も、このコラムの誠実なところだと感じます。
読み終えたあとに残るのは、申し送りノートの一行が、次の勤務者の判断を左右しているという実感だと思います。夜勤明けの現場に立つ方、申し送りを日々書いたり読んだりしている方にとって、明日の記録の書き方を少しだけ見直すきっかけになる一本ではないでしょうか。
→ 夜勤明けの申し送りで、いつも聞かれる「これ、一人でいいんでしたっけ」
おわりに
今回ご紹介した3本には、それぞれ違う場面が描かれていますが、共通して流れているのは「介助のあと」への眼差しだったように思います。すくんだ肩、送迎車を見送ったあとの沈黙、申し送りノートに残らなかった一行。どれも、動作そのものよりも、動作が終わったあとに静かに残っていくものに目を向けたコラムでした。
現場で身体を張っている方にも、ご家族として日々悩んでいる方にも、それぞれの立場から「これは自分のことかもしれない」と感じていただける回になっていたら、編集部としてとても嬉しく思います。介助のあとに残るものに気づくことは、きっと明日の自分を少しだけ楽にしてくれるはずです。
「素敵なコラム紹介」は、これからも約3週間ごとにお届けしていきます。次回もまた、読んでよかったと思っていただけるようなコラムを選んで、お届けできればと思います。どうぞ楽しみにお待ちください。
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