移乗のたびに肩がすくむわたしが、勤務の合間にほどいている 5 つの合図
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移乗のたびに肩がすくむわたしが、勤務の合間にほどいている 5 つの合図
日勤の午前、申し送りと最初の移乗を終えて、更衣室の鏡をふと見たときの話です。
鏡の中のわたしの肩が、耳の近くまで上がったままでした。力を入れているつもりはないのに、肩がすくんで、首が短く見える。ああ、わたし、朝からずっとこの肩で介助していたんだな、と、そのとき初めて気づきました。
介護施設の現場で 12 年、理学療法士として、特養と老健の両方で働いてきました。「治る」「効く」は、わたしの仕事の言葉ではありません。整える・戻す・続けやすくする、が動詞として馴染んできました。
夜勤明けの腰のことは、前に書きました。今日は、夜勤明けではなく、勤務している最中の肩の話です。移乗や体位交換のたびに、わたしたちの肩は少しずつすくんでいって、気づいたときには耳の近くまで上がっている。その肩を、勤務の合間に少しだけ「ほどく」ための、わたしの 5 つの合図を書き残しておきます。
「やる気がなくても 1 つだけ拾える」設計にしてあります。これが、続けるための条件です。
なぜ勤務中の「肩」だったのか
移乗や体位交換のとき、わたしたちは無意識に肩を持ち上げています。利用者さんを引き寄せる、支える、ベッドの高さに合わせて屈む——その一連の動きで、肩がすくむ姿勢が、1 日に何十回も繰り返される。
PT 風に言えば「上肢挙上を伴う反復動作で僧帽筋上部が持続収縮し、肩甲帯が挙上位で固定される」ですが、現場でこの言葉を使うことはありません。**「肩が、上がりっぱなし」**で十分です。
やっかいなのは、肩は「すくんでいること」に自分で気づきにくい、ということです。腰なら、玄関で屈んだ瞬間に「痛い」と分かる。でも肩は、すくんだまま固定されて、それが普通になってしまう。鏡で見て初めて、「あ、上がってた」と分かる。
だから、肩は痛くなる前に、合図で気づくしかないんですよね。わたしの 5 つは、その「気づく合図」です。

わたしが勤務の合間にほどいている 5 つの合図
「これをやれば肩こりが治る」ではありません。ただ、わたしが続けてきて、勤務終わりの肩が少し軽くなったもの、です。
1. 申し送りの前に、肩を 1 回だけ「落とす」
申し送りで立つ前に、息を吐きながら、肩をストンと 1 回だけ下げます。上げてから、ストン。それだけです。
肩は「下げよう」と思っても、力で下げると別の場所が固まります。一度上げてから、吐く息と一緒に手放す。この順番にすると、肩が自分から降りてくれる感覚が作れます。朝いちばんの合図に、ちょうどいいんです。
2. カートを押す手の高さを、肘が伸びきらない位置に
配膳カートや記録カートを押すとき、つい遠くに手を伸ばして、肘が伸びきった姿勢で押してしまいます。これ、肩が一番すくむ姿勢なんですよね。
カートに少し近づいて、肘が軽く曲がる位置で押す。手元を体に寄せるだけで、肩の持ち上がりが変わります。わたしは「カートと仲良く」と頭の中で唱えています。
3. 記録の PC の前で、画面を見る前に肩を 1 つ後ろへ
記録の入力に座ると、画面に向かって肩が前に巻きます。座った瞬間、画面を見る前に、肩を 1 回だけ後ろに回す。肩甲骨を「軽く寄せて、ほどく」。
座り作業は、立ち仕事の合間の休憩のようでいて、実は肩が前に固まる時間です。座る前のひと回しを合図にすると、入力中の巻き肩が少し減ります。

4. 移乗の前に、手より先に「足を置く」
移乗のとき、肩から持ち上げようとすると、肩に全部のせてしまいます。利用者さんに近づいて、自分の足を支える位置に先に置いてから、手を出す。足が先、手が後。
これは移乗のフォームの話なので、PT としての知識が一番効く部分です。足の位置が決まると、引き寄せる力が肩ではなく体全体に散ります。肩だけで頑張らない姿勢を、合図にして体に入れておく。利用者さんにとっても、ぐらつきが減って安心につながります。
5. 休憩で、肩甲骨を背もたれに「預ける」
休憩室の椅子に座ったら、背もたれに肩甲骨をぺたっと預けて、30 秒だけ。ストレッチではありません。ただ、預ける。
夜勤明けの腰を「動かす前にあたためる」と書いたのと同じで、固まった肩は、いきなり回すより、まず預けて体重を抜く方が、わたしには合っていました。スマホを見ながらでも、肩だけは背もたれに預けておく。それだけで、午後の肩のすくみ方が変わります。

なぜ「肩こりが治る」と書かないか
ここまで読んで、「これ、本当に肩こりに効くの?」と思った方もいるかもしれません。
正直に言うと、わたしも「効くかどうか」は分かりません。 分かっているのは、わたしの体では、勤務終わりの肩が少し軽くなった、というだけです。
「治る」「効く」「改善する」は、治療の効果を断定する書き方になります。理学療法士として、介護職員向けの記事を書く立場として、その言葉は使わない方が正しい、と整理しています。代わりに使うのは、「ほどく・整える・続ける・楽になった気がする」。
これは、書き手の責任の取り方の話でもあります。読み手の方にも、「これをやらないと続かない」と思わせたくないんです。続けるかどうかは、その人の肩が決めます。わたしの 5 つは、あなたの体に合えば 2 つだけ拾えばいい。合わなければ、捨ててください。それで十分です。

5 つ全部やる必要はないんです
利用者さんの移乗が少なかった日は、申し送り前の「肩を 1 回落とす」だけで十分です。
移乗が重なった日に 3〜4 つ拾える設計にしてあります。「全部やらないと意味がない」という設計は、続きません。
白状すると、わたしも勤務中の肩には、ずっと無頓着でした。腰は守るのに、肩は鏡を見るまで放っていた。家でも、母をベッドから起こすときに、つい肩で持ち上げて、夜に背中が張ったことが何度もあります。プロでも、自分の肩のことは後回しになるんですよね。
5 つの合図は、ときどき入れ替わります。その月の利用者さんの介助量や、自分の疲れ方によって、効くものは違ってきます。セルフケアの引き算は、休息の足し算とセットでないと続かない、と、わたしは思っています。

勤務中、最初にほどく 1 つは?
移乗のあと、もし 1 つだけ肩をほどくとしたら、どの合図を試してみますか?
わたしは「申し送りの前に、肩を 1 回だけ落とす」と答えます。これがあると、その日の肩の上がり方が、ちょっとだけ違います。
「うちには合わなかった」「2 つで足りた」「逆に増やした」という結果になっても、それは正解です。合図は、あなたの体が回るための道具で、あなたが合図に合わせる話ではないので。
今日の勤務終わり、鏡の中の自分の肩が、耳から少し離れていたら、それで十分の収穫だと、わたしは思っています。

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介護現場で12年の理学療法士です。夜勤明けの介護職員さんと家族介護中の方の隣で、続けるための体の整え方を配信します。 責めない温度感で記載します。
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