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発信のネタ出し

介護実習日誌の指導者コメント、何を書けばいい? — 学生の1場面を拾い、理由と次の問いを返す書き方

結論、介護実習日誌の指導者コメントは、評価の一言より、学生が書いた1場面を拾い、職員がそうしている理由を渡し、翌日に見てほしい点を1つ置く3文が書きやすく伝わります。感想型・誤りを含む・主観語が多い日誌への返し方と、最終日の総評の組み立ても整理しました。

執筆: けありんぐ編集部(介護福祉けありんぐ 編集部)

介護職員が休憩室の机で実習生の日誌を開き、コメント欄に書き込んでいるイラスト

介護実習日誌の指導者コメント、何を書けばいい? — 学生の1場面を拾い、理由と次の問いを返す書き方

要点

  • 指導者コメントは、①学生が書いた1場面を拾う ②職員がそうしている理由を渡す ③翌日に見てほしい点を1つ置く、の3文で組み立てると書き始めやすくなります。
  • 「よく観察できています」「明日も頑張ってください」だけでは、学生は次に何を見ればいいかが分かりません。学生の言葉を引用し、現場の理由を一言添えるだけで、コメントが翌日の実習の手がかりに変わります。
  • 誤りや危険につながる記述は、コメント欄だけで済ませず、口頭でも伝えます。日誌に利用者を特定できる情報が書かれていたら、内容より先に書き方を直してもらいます。
  • コメント欄の様式、評価項目、書いてよい範囲は、養成校の実習要項と担当教員の指示が優先です。この記事は、その範囲の中で何をどう書くかの手がかりとして使ってください。

日勤が終わって休憩室で日誌を開くと、「職員の方の声かけが丁寧で勉強になりました」と書いてある。コメント欄に「よく見ていますね。明日も頑張ってください」と書いて、それでいいのかと手が止まる。実習指導を任されたばかりの頃に、一度はこうした場面で迷うのではないでしょうか。

けありんぐではこれまで、実習生の側から実習の目標の立て方、実習日誌の「考察」の書き方、実習のまとめ(総括)の組み立て方を取り上げてきました。今回は、その日誌を受け取る実習指導者の側に立ちます。学生の日誌に何を返すと、翌日の実習につながるのかを整理します。

実習指導者のコメントは、何のために書くのか?

学生が自分の観察を言葉にし直し、翌日に何を見ればいいかをつかむための材料です。点数や合否を伝える欄としてより、現場の理由を学生に渡す欄として使うと書く内容が決まります。

介護実習の実習指導者には、制度上の要件があります。社会福祉士介護福祉士養成施設指定規則(e-Gov法令検索)の第5条第14号は、介護実習を2つの区分に分け、一定の要件を満たす介護実習施設等で行う実習(同号ロ)については、介護福祉士の資格を取得した後3年以上の実務経験があり、厚生労働大臣に届け出られた実習指導者講習会を修了した人を実習指導者とすることを定めています。

その講習会の内容は、厚生労働省の通知「社会福祉士実習指導者講習会及び介護福祉士実習指導者講習会の実施について」(平成20年11月11日、最終改正 令和2年3月6日)の別添「介護福祉士実習指導者講習会実施要領」に示されています。科目には「実習指導の方法と展開」があり、内容として「実習記録の書き方と指導方法」「実習記録の指導に関するロールプレイ」が挙げられています。実習生へのスーパービジョンを扱う科目もあります。日誌へのコメントは、こうした実習指導の一部として位置づけられている仕事です。

日誌のコメントは、学生がまとめを書くときに読み返す材料にもなります。その場の励ましより、あとで読み返して「何を見ればいいか」が分かる一文を残しておくと、実習期間を通して学生の手がかりになります。

コメントは、どんな順番で書けばいいのか?

①学生が書いた場面を、学生の言葉のまま拾う ②職員がそうしている理由を1〜2文で渡す ③翌日の実習で見てほしい点を1つ置く、の3文で組み立てます。

指導者コメントを3文で組み立てる手順の図解。上段に実習生の日誌の例(昼食の介助を見学し、職員が一口ずつ声をかけていて丁寧だと思った)を置き、下段に①場面を拾う(「一口ずつ声をかけていた」ところに目が向いていますね)、②理由を渡す(口の中が空いたのを確かめてから次を運ぶため)、③次の問いを置く(声をかけたあと職員が何を見てから次の一口に移るか見てください)の3枚のカードとコメント例を並べている

3つの文の役割は次のとおりです。

順番書くことねらい
①場面を拾う日誌の中から1場面を選び、学生の言葉を引用して取り上げる学生の観察のどこが現場の大事な点に触れていたかを示す
②理由を渡すその場面で職員がそうしている理由(介護の意図)を短く伝える学生が「丁寧」「すごい」で止めていた観察に、理由をつなぐ
③次の問いを置く翌日の実習で確かめてほしい点を1つだけ書く学生が翌日、何を見ればいいかを決められるようにする

図の例は説明用に作ったもので、実在の実習記録ではありません。②の理由は、自分の職場でその利用者に実際にそうしている理由に置き換えて書いてください。理由がはっきりしないときは、その場で書かずに先輩職員や看護職員に確かめてからにします。

①で学生の言葉を引用するのは、学生が自分の書いた文のどこに意味があったのかを確かめられるようにするためです。「よく観察できています」とだけ書くと、何がよかったのかが伝わりません。「『一口ずつ声をかけていた』ところに目が向いていますね」と引用すると、学生は自分の観察のどの部分が現場の大事な点に触れていたかを知ることができます。

③の問いは1つに絞ります。いくつも書くと、翌日どれから見ればいいかを学生が選べなくなります。

日誌が感想だけのとき、どう返せばいいのか?

感想の中から事実が書かれた部分を1つ探し、そこを拾って理由と問いをつなぎます。考察の書き方を一から指導し直すより、学生の文の中にある材料を使うほうが伝わります。

実習の初めのうちは、「勉強になった」「大変だと思った」のような感想で終わる日誌もあります。このとき「考察を書いてください」とだけ返しても、学生は何を足せばいいのか分かりません。

学生向けの記事では、考察を「事実→気づき→理由づけ→次への行動」の順に書く方法を紹介しています。指導者のコメントの3文は、この順番と対応しています。①で事実を拾い、②で理由づけの手がかりを渡し、③で次への行動のきっかけを置く形です。学生の側が、コメントを手がかりに翌日の考察を書けるようになります。

日誌の書き方コメントで拾うところコメントの例
「入浴介助を見学し、大変だと思った」何が大変だと感じたのか(事実が書かれていない)どの場面で大変だと感じましたか。明日は、職員が浴室に入る前に何を準備しているかを書き出してみてください
「職員の声かけが丁寧だった」丁寧と感じた具体的な声かけ丁寧だと感じた声かけを、一つ言葉どおりに書いてみましょう。その言葉の前に、職員が何をしていたかも見てください
「利用者様の笑顔が見られてよかった」笑顔の前に何があったか笑顔の直前に、誰が何をしていましたか。明日はその前後の流れを書いてみてください

表のコメントは書き方を示すために作った例で、実際の学生の日誌から写したものではありません。言い回しは、受け持っている学生の書きぶりに合わせて変えてください。

日誌に誤りや危ない記述があったら、どう伝えればいいのか?

利用者の安全に関わる誤りは、コメント欄だけで済ませず、その日のうちに口頭でも伝えます。書きことばだけでは、学生が読むのが翌日以降になることがあるからです。

日誌には、学生の理解違いが書かれていることがあります。手順の順番の取り違え、職員の対応の意図の読み違え、利用者の状態についての思い込みなどです。

伝え方は、誤りの種類で分けます。

  • 安全に関わる誤り(介助の手順、禁止されている対応など):口頭で伝え、コメント欄にも何を確認したかを短く残す。必要に応じて担当教員にも共有する
  • 理解の読み違い(職員の意図の取り違えなど):コメント欄で、職員が実際にそうした理由を伝える。「〜は誤りです」で終えず、理由を一文添える
  • 利用者の状態についての断定(「認知症が進んでいる」のような書き方など):見えた行動と、そこから考えたことを分けて書くよう伝える

利用者の状態を一言でまとめる書き方は、実習生に限らず職員の記録でも起きます。「不穏」「拒否」のような言葉をどう書き直すかは、介護記録の「不穏」はどう言い換える?で、行動と言葉で書く例文をまとめています。学生に伝えるときの参考にできます。

日誌に利用者の名前などが書かれていたら、どうすればいいのか?

内容へのコメントより先に、書き方を直してもらいます。何を伏せるかの基準は、養成校と実習先の決まりに従います。

日誌は学校に提出され、教員の目にも触れます。利用者の氏名や、居室番号、特定につながる詳しい経歴などをどう扱うかは、養成校の実習要項や、実習先との取り決めで決まっていることが多いものです。実習の初日にその決まりを学生と一緒に確認しておくと、あとから書き直しを頼む場面が減ります。

決まりがはっきりしないときは、自分の判断で「これは書いてよい」と言い切らず、担当教員と施設の実習担当者に確認します。

実習の最終日の総評は、どう組み立てればいいのか?

実習前に学生が立てた目標を軸にして、①目標に向けて学生が試していたこと ②最初の週と最後の週で変わった場面 ③次の実習や就職後の課題、の順に書きます。

最終日には、日々のコメントとは別に、実習全体への総評や評価表の所見を書くことがあります。総評も、日々のコメントの延長として書くと組み立てやすくなります。

  • ①目標に向けて試していたこと:学生が実習前に立てた目標を一文で書き、そのために続けていた行動を挙げる
  • ②変わった場面:最初の週と最後の週の同じ場面を比べて書く(例:1週目は返事を待たずに手を添えていたが、最終週は返事を待ってから介助を始める場面が増えた)
  • ③次の課題:できなかったことを、次に試す行動とあわせて1つ書く

学生も、まとめを書くときに目標・日誌・指導者のコメントを並べて振り返ります。指導者の総評が同じ軸で書かれていると、学生は自分のまとめと照らし合わせて読むことができます。評価の段階や項目は養成校ごとに異なるので、評価表の記入方法は学校の説明に従ってください。

毎日コメントを書く時間がとれないときは、どうすればいいのか?

全部の記述に返そうとせず、その日の日誌から1場面だけを選びます。3文の型に沿えば、何を書くかで迷う時間を減らせます。

指導者は、実習生の受け入れと並行して通常の業務にも入っています。日誌を読む時間を毎日まとまって取れるとは限りません。

日誌の記述すべてに赤字を入れると、指導者の負担が増えるだけでなく、学生もどこから直せばいいのか分からなくなります。コメントはその日いちばん伝えたい1場面に絞り、他の気になった点は翌朝の打ち合わせで口頭で伝える、と分けておくと続けやすくなります。

施設の中で指導者が複数いる場合は、コメントの書き方を職員同士で一度そろえておくと、日によって指導の方向が変わる混乱を避けられます。施設の取り組みを言葉にしておくことが育成とどう関わるかは、介護施設の管理職の発信は、採用・定着・育成にどう関わるのかで整理しています。

実習指導で書いたことは、発信にどうつながるのか?

学生に渡した「職員がそうしている理由」は、そのまま発信の題材になります。ふだん言葉にしない現場の理由を、学生に説明するために一度書き出しているからです。

学生の日誌に理由を書こうとすると、「自分はなぜ、いつもこうしているのか」を考え直すことになります。一口ずつ声をかける理由、浴室に入る前に確かめていること、記録の書き方で気をつけていること。どれも、長く現場にいる人ほど当たり前になって、説明する機会が少ない内容です。

こうした「理由」は、同じように実習指導を任された人や、新人に教える立場の人にとって、そのまま使える手がかりになります。発信するときは、日誌の文面や学生の名前、実習先が分かる情報は書かず、自分が説明した理由と、それを伝えるときに工夫したことだけを残します。何を外せばよいかは、個人が特定されない書き方の5つの自衛ルールで確認できます。実習で知った情報の扱いは、施設と養成校の決まりに従ってください。

まとめ:指導者コメントで持ち帰れること

  • コメントは①学生の1場面を引用して拾う ②職員がそうしている理由を渡す ③翌日に見てほしい点を1つ置く、の3文で組み立てる
  • 感想だけの日誌は、文の中にある事実を1つ探して拾う。安全に関わる誤りは口頭でも伝え、利用者を特定できる記述は先に書き方を直してもらう
  • 最終日の総評は、学生の目標を軸に、試していたこと・変わった場面・次の課題の順に書く。様式と評価項目は養成校の指示に従う

次に日誌を受け取ったら、コメントを書く前に、学生の文の中から引用できる一言に線を引いてみてください。その一言から書き始めると、3文が続けて書けます。

参考資料

  • 社会福祉士介護福祉士養成施設指定規則(昭和62年厚生省令第50号)第5条第14号(e-Gov法令検索)
  • 厚生労働省社会・援護局長通知「社会福祉士実習指導者講習会及び介護福祉士実習指導者講習会の実施について」(平成20年11月11日社援発第1111003号、最終改正 令和2年3月6日社援発0306第27号)別添「介護福祉士実習指導者講習会実施要領」(厚生労働省公開PDF)

2026年11月3日に内容を確認しています。

よくある質問

A. 学生が書いた場面を1つ選び、学生の言葉を引用して取り上げ、その場面で職員がそうしている理由を1〜2文で伝え、翌日の実習で見てほしい点を1つ書きます。「よく観察できています」「頑張ってください」だけで終えるより、学生が次に何を見ればいいかが分かるコメントになります。

A. 感想の中から事実が書かれた部分を1つ探して拾い、丁寧と感じた声かけを言葉どおりに書いてもらう、笑顔の直前に何があったかを見てもらう、のように具体的な問いを返します。「考察を書いてください」とだけ返しても、学生は何を足せばいいかが分かりません。

A. 利用者の安全に関わる誤りは、コメント欄だけで済ませず、その日のうちに口頭でも伝えます。学生が日誌を読むのが翌日以降になることがあるためです。必要に応じて担当教員にも共有します。職員の意図の読み違いなどは、コメント欄で実際の理由を一文添えて伝えます。

A. 学生が実習前に立てた目標を軸に、目標に向けて試していたこと、最初の週と最後の週で変わった場面、次の実習や就職後の課題の順に書くと組み立てやすくなります。評価の段階や評価表の記入方法は養成校ごとに異なるため、学校の説明に従ってください。

A. 社会福祉士介護福祉士養成施設指定規則第5条第14号では、一定の要件を満たす介護実習施設等で行う実習について、介護福祉士の資格取得後3年以上の実務経験があり、厚生労働大臣に届け出られた実習指導者講習会を修了した人を実習指導者とすることが定められています。講習会の内容には、実習記録の書き方と指導方法も含まれています。

この記事を、自分の経験を整理するきっかけに

まずは公開せず、次の3点を手元のメモに書いてみてください。

  1. どんな場面で、何を見たり聞いたりしたか
  2. 自分は何を考え、どんな工夫をしたか
  3. 同じ立場の人に、どんな経験や工夫を聞きたいか

業務記録をそのまま転載せず、利用者・家族・職場が特定される情報を含めない形に整理します。迷う内容は公開前に職場のルールと相談先を確認してください。

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