介護実習の「まとめ」が書けない人へ — 総括は、目標と日誌を並べ直すと書き始められる
結論、介護実習のまとめ(総括)は白紙から考えて書くものではありません。実習前の目標、日誌の「次への行動」、指導者のコメントの3つを並べ、何をしたか・変化した場面・理由・残った課題の順に組み立てます。振り返りの観点に迷ったときの手がかりも整理しました。
執筆: けありんぐ編集部(介護福祉けありんぐ 編集部)

介護実習の「まとめ」が書けない人へ — 総括は、目標と日誌を並べ直すと書き始められる
要点
- 実習のまとめは、実習期間全体を、最初に立てた目標に照らして振り返る書きものです。 1日の1場面を振り返る日誌の考察とは、見る範囲が違います。
- 書き始める前に、①実習前の目標 ②日誌の「次への行動」 ③指導者からのコメントの3つを手元に並べます。まとめの材料は、実習中にすでに書いてあります。
- 組み立ては、①目標に対して何をしたか ②変化が見えた場面 ③そうなった理由 ④残った課題と次の行動の4ブロックです。
- 観点に迷ったら、厚生労働省が示した介護実習の「教育に含むべき事項」(介護過程の実践的展開・多職種協働の実践・地域における生活支援の実践)を手がかりにできます。様式や字数は、学校の指示を優先してください。
実習の最終日が近づくと、日誌とは別に「実習のまとめ」「総括」「最終レポート」を書くよう求められることがあります。いざ用紙を前にすると、「学びの多い実習でした」「利用者様の笑顔が印象に残りました」と書いたところで手が止まる。数週間分の経験があるはずなのに、何から書けばいいのか分からなくなる人は少なくありません。
けありんぐではこれまで、実習前に立てる目標の具体化と、毎日書く実習日誌の「考察」を取り上げてきました。今回はその続きとして、実習の最後に書く「まとめ」を扱います。目標と日誌を書いてきた人なら、まとめの材料はもう手元にそろっています。
実習のまとめは、日誌の考察と何が違うのか?
考察は1日の中の1場面を振り返るものです。まとめは、実習期間全体を、実習前に立てた目標に照らして振り返ります。
日誌の考察では、「今日の食事介助で、職員が一口ごとに飲み込みを確かめていた」のように、その日の1場面を取り上げて、事実・気づき・理由づけ・次への行動を書きました。まとめで同じことをしようとすると、場面が多すぎて選べなくなります。
まとめで読み手(実習指導者や担当教員)が確かめたいのは、実習を通して何がどう変わったかです。そのため、まとめの軸になるのは個々の場面より、実習前に立てた目標です。目標に向けて何を試し、最初と最後で何が変わり、何が残ったか。この流れで書くと、数週間分の経験から書く場面を選ぶ基準がはっきりします。
日誌の考察を書くときは「今日の1場面」を、まとめを書くときは「目標から見た全体」を思い浮かべる、と切り替えておくと迷いにくくなります。
まとめは、何から書き始めればいいのか?
白紙の用紙に向かう前に、①実習前の目標 ②日誌の「次への行動」 ③指導者からのコメント、の3つを手元に並べます。
まとめで手が止まるのは、書くことがないからというより、数週間分の記憶を頭の中だけで整理しようとするからです。材料を紙の上に出してから書き始めると、作業が「思い出す」から「選んで並べる」に変わります。
①実習前の目標
実習が始まる前に提出した全体目標と、日ごとに立てた目標を書き写します。まとめは、この目標に対する答えとして書きます。目標が抽象的なままだった人も、そのまま書き写して構いません。「抽象的な目標を、実習中にどう具体化していったか」も、まとめに書ける材料になります。
②日誌の「次への行動」
日誌の考察で毎日書いた「明日から何を意識するか」の部分だけを、日付順に書き出します。並べてみると、同じ行動を何日も試し続けていたこと、途中で別の行動に切り替えたことが見えてきます。これが、実習期間を通した自分の変化の記録です。
③指導者からのコメント
日誌への書き込みや、口頭で受けた助言を拾います。口頭の助言は、その日のメモや日誌の余白に残っていることがあります。指導者の一言がきっかけで行動が変わった場面は、まとめの中心になりやすい場面です。
3つを並べたら、②の中から「一番長く試し続けた行動」に印をつけてください。そこが、まとめで書く中心の場面の候補になります。
まとめは、どんな順番で組み立てればいいのか?
①目標に対して何をしたか ②変化が見えた場面 ③そうなった理由 ④残った課題と次の行動、の4ブロックで組み立てます。
4つのブロックの中身と記入例は次のとおりです。
| ブロック | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| ①目標に対して何をしたか | 目標を1文で書き、そのために試した行動を2〜3個挙げる | 「本人のペースに合わせた介助を学ぶ」を目標にし、食事介助で、声をかけたあとに1呼吸置いてから次の一口を運ぶことを続けた |
| ②変化が見えた場面 | 最初の週と最後の週の、同じ場面を比べる | 1週目は返事を待てずに手を添えていた。3週目には、返事を待ってから介助を始められる場面が増えた |
| ③そうなった理由 | 変われた理由、変われなかった理由を、自分の解釈として書く | 2週目に指導者から「待つ時間も介助の一部」と助言を受け、待つことを手順の一つとして意識するようになったからだと考えた |
| ④残った課題と次の行動 | できなかったこと、次の実習や就職後に試す行動を1つずつ書く | 入浴介助は見学が中心で、自分で手順を説明できるまでに至らなかった。次の実習では、介助に入る前に手順を声に出して指導者と確認する |
表と図の記入例は、ひとりの実習生を想定して作った説明用の例で、実在の実習記録ではありません。自分の実習先の場面と、学校の様式に置き換えて使ってください。
②で「最初の週と最後の週」を比べるのは、変化を読み手に見える形にするためです。「できるようになった」とだけ書くより、「1週目はこうだった、3週目はこうなった」と2つの時点を並べたほうが、何が変わったのかが伝わります。日誌が時系列で残っているので、同じ場面の1週目と最後の週の記述を探して並べれば書けます。
「できなかったこと」は、まとめに書いていいのか?
書いて構いません。できなかった事実に、理由の考察と次の行動を添えれば、反省文より振り返りとして読める文章になります。
まとめは評価に関わる書きものなので、うまくいったことだけを並べたくなります。けれど、数週間の実習で目標がすべて達成できることのほうがまれです。できなかったことを書かずにおくと、④のブロックが「今後も頑張りたい」のような一文だけになりがちです。
できなかったことは、次の3点をそろえて書きます。
- 事実: 何ができなかったか(例:入浴介助は見学が中心で、手順を自分で説明できるまでに至らなかった)
- 理由の考察: なぜそうなったと考えるか(例:見学のときに手順を追うことに精一杯で、声かけの内容まで記録できていなかった)
- 次の行動: 次にどう試すか(例:次の実習では、介助に入る前に手順を声に出して指導者と確認する)
「申し訳ありませんでした」「至らない点が多くありました」とお詫びを重ねても、読み手には次に何をするかが伝わりません。次の行動を1つ具体的に書くほうが、振り返りとして読まれます。なお、評価の観点や書き方の決まりは学校ごとに異なります。様式の説明や担当教員の指示がある場合は、そちらを優先してください。
振り返りの観点に迷ったら、何を手がかりにすればいいのか?
厚生労働省が示した介護実習の「教育に含むべき事項」の3つを、観点の候補として使えます。介護過程の実践的展開、多職種協働の実践、地域における生活支援の実践です。
介護福祉士の養成課程は教育内容の見直しが行われ、2019(平成31)年度から順次導入することが想定されました。厚生労働省の社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会(平成30年2月15日)の資料「介護福祉士養成課程における教育内容の見直し」では、「介護実習」に上の3つを【教育に含むべき事項】として追加するとしています。同じ資料の時間数の表では、養成施設ルートの介護実習は450時間、学内の学びと実習をつなぐ「介護総合演習」は120時間とされ、介護総合演習には「知識と技術の統合」「介護実践の科学的探求」が事項として加えられています。
この3つを、まとめを見直すときの問いに置き換えると次のようになります。
| 教育に含むべき事項 | まとめを見直すときの問い |
|---|---|
| 介護過程の実践的展開 | 担当した方について、情報を集める・計画を考える・実施する・振り返る、のうちどこまで経験できたか |
| 多職種協働の実践 | 看護職・リハビリ職・相談員・ケアマネジャーなど、介護職以外の職種と情報をやり取りした場面はあったか |
| 地域における生活支援の実践 | 利用者の生活が、施設や事業所の外の誰・どことつながっていたかに気づいた場面はあったか |
3つすべてをまとめに書く必要はありません。実習の段階や実習先によって、経験できる範囲は違います。ここで使うのは、書き終えたまとめを読み返して「目標と関係する観点を落としていないか」を確かめるためです。学校から観点や項目が指定されている場合は、そちらに沿って書いてください。
反省会や報告会で話すときは、まとめをどう短くすればいいのか?
4ブロックのうち、①の目標と④の次の行動を中心にし、②の変化した場面を1つだけ添えます。
実習の最終日に実習先で反省会が開かれたり、学校に戻ってから報告会で発表したりすることがあります。書いたまとめをそのまま読み上げると、時間内に収まらないことがあります。
話すときは、次の順番に絞ると短くまとまります。
- 実習前に立てた目標(1文)
- 一番変化が見えた場面(最初の週と最後の週を1文ずつ)
- 残った課題と、次に試す行動(1文ずつ)
実習先の反省会では、お世話になった職員の方へのお礼を伝える場面もあると思います。お礼は最初か最後に一言でまとめ、残りの時間は振り返りの中身に使うと、聞き手も実習生が何を持ち帰ったのかを受け取りやすくなります。
まとめを書くときに、よくあるつまずきは?
日誌の要約になる、抽象的な言葉で閉じる、利用者が特定できる書き方をする、の3つが代表的です。
つまずき1: 日誌の要約になってしまう
1週目に何をして、2週目に何をして、と日付順に出来事を並べると、まとめというより日誌の要約になります。並べる軸は目標です。①のブロックで目標を書いてから、その目標に関係する出来事だけを選んでください。
つまずき2: 「学びの多い実習でした」で閉じてしまう
締めくくりの一文が「多くのことを学びました」「貴重な経験になりました」だと、何を学んだのかが読み手に残りません。④のブロックで書いた「次に試す行動」を最後の一文に置くと、まとめの終わりが具体的になります。
つまずき3: 利用者が特定できる書き方をしてしまう
まとめは学校に提出し、場合によっては教員や他の学生の目にも触れます。利用者の氏名や、特定につながる詳しい情報の書き方は、学校や実習先の決まりに従ってください。
実習のまとめは、発信にどうつながるのか?
まとめで書いた「変化が見えた場面」と「残った課題」は、そのまま発信の題材になります。ただし、公開する前に、個人や実習先が特定されない形に書き直す必要があります。
まとめの4ブロックは、経験が浅いからこそ書けるで紹介した「初めての視点」の発信と同じ材料でできています。「1週目は返事を待てずに手を添えていた」という気づきは、実習を終えたばかりの今だからこそ書ける内容です。現場に何年も立つと、こうした最初の戸惑いは思い出しにくくなります。
一方で、実習のまとめは学校と実習先に向けた書きもので、そのまま公開してよいものではありません。実習で知った情報の扱いは、学校や実習先のルールに従ってください。発信に使うときは、施設名・地域・日付・利用者の詳しい状態など、組み合わせると特定につながる情報を外し、自分の気づきと次の行動だけを残します。何を外せばよいかは、個人が特定されない書き方の5つのルールを確認してから決めてください。公開してよいか迷う内容は、公開前に担当教員に相談してください。
まとめ:この記事で持ち帰れること
この記事で整理したのは、次の2つです。
- まとめの材料と組み立て方——実習前の目標・日誌の「次への行動」・指導者のコメントを並べ、①何をしたか②変化した場面③理由④残った課題と次の行動の順に書くこと
- 迷ったときの確かめ方——できなかったことは事実・理由・次の行動をそろえて書くこと、観点は介護実習の「教育に含むべき事項」の3つを手がかりにできること
まとめの用紙に向かう前に、まず日誌を開いて、「次への行動」の欄だけを日付順に書き出してみてください。数行並べただけで、実習を通して自分が何を試し続けたのかが見えてきます。そこが、まとめの最初の一文になります。
よくある質問
A. 日誌の考察は、その日の1場面を事実・気づき・理由づけ・次への行動の順に振り返るものです。まとめは、実習期間全体を、実習前に立てた目標に照らして振り返ります。目標に向けて何を試し、最初と最後で何が変わり、何が課題として残ったかを書きます。
A. 実習前の目標、日誌の「次への行動」の欄、指導者からのコメントの3つを手元に並べることから始めます。特に「次への行動」を日付順に書き出すと、実習を通して何を試し続けたかが見え、まとめの中心になる場面を選びやすくなります。
A. 書いて構いません。何ができなかったか(事実)、なぜそうなったと考えるか(理由)、次にどう試すか(次の行動)の3点をそろえて書けば、振り返りとして読める文章になります。様式や評価の観点について学校の指示がある場合は、そちらを優先してください。
A. 厚生労働省が示した介護実習の「教育に含むべき事項」(介護過程の実践的展開、多職種協働の実践、地域における生活支援の実践)を、見直しの観点として使えます。3つすべてを書く必要はなく、書き終えたまとめに目標と関係する観点の抜けがないかを確かめるために使います。
A. 実習前に立てた目標を1文、一番変化が見えた場面を最初の週と最後の週で1文ずつ、残った課題と次に試す行動を1文ずつ、の順に絞ると短くまとまります。お礼は最初か最後に一言でまとめ、残りを振り返りの中身に使います。
この記事を、自分の経験を整理するきっかけに
まずは公開せず、次の3点を手元のメモに書いてみてください。
- どんな場面で、何を見たり聞いたりしたか
- 自分は何を考え、どんな工夫をしたか
- 同じ立場の人に、どんな経験や工夫を聞きたいか
業務記録をそのまま転載せず、利用者・家族・職場が特定される情報を含めない形に整理します。迷う内容は公開前に職場のルールと相談先を確認してください。



