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セルフケア2026年7月3日5分で読める

母の靴をしゃがんで履かせた夜、膝が立ち上がらなかったわたしへ

あさひ
あさひ
@kaigo_health
母の靴をしゃがんで履かせた夜、膝が立ち上がらなかったわたしへ
目次

母の靴をしゃがんで履かせた夜、膝が立ち上がらなかったわたしへ

実家の玄関で、母の靴を履かせるためにしゃがんだ夜のことです。

履かせ終えて立ち上がろうとしたら、膝が、すっと伸びてくれませんでした。一拍おいて、太ももの前に力を入れ直して、やっと立てた。母には気づかれないように笑っていましたが、内心は「あ、わたしの膝、こんなに重かったっけ」でした。

介護現場で 12 年、理学療法士として、特養と老健の両方で続けてきました。職場では移乗や腰のことばかり気にしてきたのに、家で母の介護をしていると、いちばん削れていたのは 膝としゃがむ動作 だったんですよね。

この記事は、夜勤明けの腰の話でも、勤務中の肩の話でもありません。床に近い低い位置での介助で、静かに削れていく膝の話です。介護職員さんにも、家で家族介護をしている方にも、両方に向けて書いています。「治る」「効く」は使いません。膝を 守りながら続ける ための、わたしの段取りを書き残します。

なぜ「膝」と「しゃがむ動作」だったのか

腰は、玄関で屈んだ瞬間に「あ、痛い」と分かります。肩は、鏡を見れば「上がってた」と分かる。でも膝は、その場では何も言ってこないんです。しゃがんでいる最中は平気で、立ち上がる一拍に、初めて「重い」と気づく

介護の動作には、しゃがむ場面が思っているより多くあります。玄関で靴を履かせる、床に落ちた物を拾う、低いベッドや布団からの起き上がりを支える、入浴時に浴室の低い椅子のそばに屈む、おむつ交換でベッドの高さを下げて屈む——。1 回ずつは数十秒でも、それが 1 日に何度も積み重なります。

PT 風に言えば「膝関節の屈伸を伴う立ち座りの反復で、大腿四頭筋と膝周囲に負荷が集中する」ですが、現場でも家でも、そんな言葉は使いません。**「しゃがんで、立つ。それを 1 日に何回も」**で十分です。

やっかいなのは、膝は腰や肩より「がまんが効いてしまう」ところです。その場で痛まないから、無理した量が分からないまま、夜にじわっと重くなる。だから膝は、痛くなってから対処するのではなく、しゃがむ前の段取りで、削れる量を減らしておく しかないんですよね。わたしの段取りは、その「先に減らしておく」ための工夫です。

玄関で母の靴を履かせたあと、膝が立ち上がりにくく一拍おく場面

わたしが「しゃがむ前」に整えている段取り

「これをやれば膝が治る」ではありません。ただ、わたしが続けてきて、夜の膝が少し軽くなった段取り、です。やる気がなくても 1 つだけ拾える形にしてあります。

1. しゃがむより先に、片膝を床につけられないか見る

両膝でぐっとしゃがむ姿勢は、立ち上がりに太ももの前を一番使います。玄関や床に近い介助では、しゃがむのではなく、片膝を床につく形にできないか、先に見ます。

片膝立ちにすると、立ち上がるときに前の足で床を押せるので、膝への負担が片側に逃げて、両膝でこらえるよりわたしには楽でした。母の靴を履かせるときも、今は片膝をついてから手を出すようにしています。

2. 立つときは「膝で立つ」より「お尻と太ももの後ろで立つ」

しゃがんだ姿勢から立つとき、つい膝の前側に力を入れて、ぐっと押し上げてしまいます。これが、立ち上がりの一拍を重くする姿勢なんですよね。

立ち上がる直前に、お尻を後ろに引いて、太ももの後ろとお尻で押し上げる意識に変えます。「膝で立つ」のではなく「お尻で立つ」。声に出さず、頭の中で「お尻から」と唱えるだけでも、膝の前側にのる量が減ります。

3. 床の物・低い介助は、できる範囲で「高さを借りる」

床に落ちた物を拾うとき、低いベッドのそばに屈むとき、その場の高さに合わせてしゃがむと、膝は毎回フルにしゃがみます。可能なときは、ベッドの高さを少し上げる、椅子や台に浅く腰かけてから屈むなど、高さを借りて、しゃがむ深さを浅くします。

これは職場では移乗の前にベッドの高さを合わせる発想と同じで、PT としての見方が一番活きる部分です。家では、玄関に小さな腰かけを一つ置いてから、母の介助の膝がだいぶ楽になりました。腰かけを置くだけで、しゃがまずに浅く座ってから屈めるので、膝がフルにしゃがむ回数そのものが減るんですよね。利用者さんにとっても、深く屈んで支えるより、こちらの姿勢が安定する分、ぐらつきが減って安心につながります。

4. しゃがむ場面が続いたら、合間に太ももの前を「ゆるめる」

しゃがんで立つを何度も繰り返すと、太ももの前が張ったまま固まってきます。次の介助に入る前に、立ったまま片足のかかとをお尻に近づけて、太ももの前を 10 秒だけゆるめておきます。

ストレッチというより、固まりかけた前ももを「いったん手放す」くらいの軽さです。壁や手すりに片手を添えれば、ふらつかずにできます。わたしは母を起こす介助が重なった日に、台所に立ったついでにこれを挟むようにしてから、夜の膝の重さが少し違ってきました。固める時間が続いたら、ゆるめる時間を小さく足す。引き算と足し算はセットでないと続かない、と思っています。

片膝立ちと「お尻から立つ」段取りをやわらかく示す場面

なぜ「膝が治る段取り」と書かないか

ここまで読んで、「これ、本当に膝にいいの?」と思った方もいるかもしれません。

正直に言うと、わたしも「効くかどうか」は分かりません。分かっているのは、わたしの体では、しゃがむ場面が続いた日でも、夜の膝が少し軽くなった、というだけです。

「治る」「効く」「改善する」「予防できる」は、医療の効果を断定する言葉になります。理学療法士として、介護職員さんと家族介護の方の両方に向けて書く立場として、その言葉は使わない方が正しい、と整理しています。代わりに使うのは、ほどく・整える・続ける・削れる量を減らす

膝に違和感が続くときや、しゃがむのがつらいときは、わたしの段取りより先に、医療機関でみてもらってほしいんです。セルフケアは、痛みの相談を置きかえるものではなくて、痛くなる前の毎日を少し楽にしておくためのものだ、とわたしは思っています。

5 つも 3 つも全部やる必要はありません。玄関で靴を履かせる場面が多い日は「片膝をつく」だけ、立ち座りが多い日は「お尻から立つ」だけでも十分です。全部やらないと意味がない、という段取りは、続きません。

白状すると、わたしも自分の膝にはずっと無頓着でした。腰は守るのに、膝は夜に重くなるまで放っていた。職場では利用者さんの転倒リスクや立ち上がりを毎日のように見ているのに、家に帰ると自分の膝のことだけは、いちばん後回しになるんですよね。プロでも、というより、プロだからこそ、自分の体は最後に回してしまうのかもしれません。続けるための段取りは、その月の母の体調や自分の疲れ方で、ときどき入れ替わります。先月効いた段取りが今月は合わない、ということも普通にあります。それでいいんです。合図も段取りも、固定するためのものではなく、その日の自分の膝に合わせて選び直すためのものなので。

夕方、膝の力をゆるめて椅子で脚を伸ばし一息つく静かな場面

今夜、しゃがむ前に試す 1 つは?

もし 1 つだけ膝を守る段取りを試すとしたら、どれを選びますか?

わたしは「しゃがむより先に、片膝を床につけられないか見る」と答えます。これがあると、立ち上がりの一拍が、ちょっとだけ軽くなります。

「うちには合わなかった」「片膝はつけない場所だった」「お尻から立つだけで足りた」という結果になっても、それは正解です。段取りは、あなたの膝が続くための道具で、あなたが段取りに体を合わせる話ではないので。合わなければ捨ててください。それで十分です。

今夜、玄関や布団のそばでしゃがんで、立ち上がる一拍が、いつもより少しだけ軽かったら、それで十分の収穫だと、わたしは思っています。

なお、家族介護の段取りや、家での介護環境をどう整えるかは、テーマ的に隣接しているので別の場所でも書いています。膝の話だけは、ここで書き残しておきますね。

理学療法士

玄関や布団のそばでしゃがんだあと、軽やかに立ち上がる静かな終わりの場面

##しゃがむ動作#家族介護#介護職員#整える
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介護現場で12年の理学療法士です。夜勤明けの介護職員さんと家族介護中の方の隣で、続けるための体の整え方を配信します。 責めない温度感で記載します。

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