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セルフケア2026年8月5日4分で読める

母の背中を洗うたびに、股関節の前が突っ張っていたわたしへ

あさひ
あさひ
@kaigo_health
母の背中を洗うたびに、股関節の前が突っ張っていたわたしへ
目次

母の入浴介助で、浴槽のふちをまたぐ足を後ろから支えた夜がありました。中腰のまま両手を伸ばし、母の体重がふわりと浴槽の外へ抜ける瞬間だけ、わたしも息を止めます。またぎ終えた拍子に、股関節の前側がツキンと突っ張ったんですよね。

浴室の湯気の中で、しばらくその場にしゃがみ込んだまま動けませんでした。膝を伸ばそうとしても、股関節の付け根が引っかかったように伸びない。母は「大丈夫?」と、湯船から心配そうにこちらを見ていました。

その日は木曜日で、翌日はそのまま夜勤という一週間の中でも特に重い並びでした。忙しさに紛れて、股関節のことなんて考えている余裕はなかったんです。腰や肩の張りならすぐに気づけるのに、股関節の前側は、動けなくなって初めて気づく場所でした。

これは家族介護で入浴介助をしている方にも、職場で移乗介助をしている介護職員の方にも、心当たりのある場所だと思います。腰や肩の話はよく書いてきましたが、股関節の前側について書いたことがなかったので、今日はここを掘ってみます。

母の背中を洗う中腰が、いちばん長い時間

入浴介助の中で一番長く同じ姿勢を続けるのは、実はまたぐ瞬間ではなく、背中を洗っている時間だと思っています。

浴槽の縁に膝をつき、中腰のまま母の背中に手を伸ばす。母は湯船の中でゆっくり深呼吸をしながら、洗う順番を毎回同じにしてほしがるので、洗髪から洗身、すすぎまで含めるとこの姿勢のままおそらく10分近く続けています。膝は軽く曲げ、股関節も同じ角度で固定したままです。移乗のように体重を移し替える動きとは違って、ここは「止まっている介助」なんですよね。

股関節の前側には、脚を持ち上げるときに使う筋肉があります。中腰で固定される時間が長くなるほど、この筋肉は縮んだ状態で硬くなっていきます。まっすぐ立ち上がったときに、その硬さが「突っ張り」として現れる。わたしがしゃがみ込んだ日も、まさにこのパターンでした。

同じ中腰でも、腰は反らして支える動きが中心で、股関節は曲げたまま固定される動きが中心です。使われ方が違うぶん、痛みの出方も違って、股関節は「張って動かない」という形で先に教えてくれるのだと、しゃがみ込んだ日に初めて実感しました。

夜勤明けの朝に腰が固まる話と、根っこは同じです。同じ角度で止まっていた時間の長さが、後から体に返ってくるんですよね。止まっている介助ほど、実は負担が見えにくいんだと思います。

浴槽の縁で中腰になり母の背中を洗う理学療法士の女性

夜勤の移乗でも、同じ場所を使っていた

気づいたのは、その翌日の夜勤でした。

ベッドから車椅子へ移乗するとき、わたしは膝を落として重心を低くします。母の入浴介助のときと、ほぼ同じ角度で股関節を曲げる姿勢です。深夜の記録を書こうと椅子に座った瞬間、股関節の前がまた同じように突っ張って、腰を下ろすタイミングがワンテンポ遅れました。

家では入浴介助、職場では移乗介助。場面は違っても、股関節の前側を同じように縮めて使っていたことに、そのとき初めて気づいたんです。回復する間もないまま、同じ場所を重ねて使っている状態でした。

翌朝、洗面所で中2の長女に「お母さん、なんかしゃがみ方ぎこちないよ」と言われて、少し笑ってしまいました。自分では普通に歩いているつもりでも、家族には隠せないものなんですよね。夫にも「入浴、たまには代わろうか」と言われましたが、母は昔から人見知りで、慣れた手が違うと落ち着かない人なので、結局は自分でやることを選びました。無理を選んでいる自覚はありつつも、です。

特養でも老健でも、移乗の回数そのものを減らすことはできません。母の入浴介助も、続ける以上は避けられない時間です。だとすれば、使った場所を使いっぱなしにしない工夫を、自分の生活に組み込むしかないと思いました。

夜勤で車椅子への移乗介助をする理学療法士の女性

洗う順番を、母と相談して変えてみた

工夫のひとつは、ストレッチより前に、そもそも中腰の時間そのものを短くすることでした。

これまでは立ったまま中腰で背中から洗っていたのを、風呂椅子を浴室に持ち込んで、わたし自身が座って洗う順番に変えてみたんです。母には「今日はお母さんの後ろに座って洗うね」と伝えて、洗う位置を少し調整してもらいました。最初は勝手が違うのか母も戸惑っていましたが、2回目からは「そっちのほうが楽そうね」と言ってくれるようになりました。

座って洗える背中と腰回りは椅子のまま、浴槽をまたぐ介助だけ中腰に戻す。中腰の時間を10分から3分ほどまで減らせた感覚があります。全部を変えるのではなく、一番長く固定される部分だけ座る姿勢に置き換える。それだけで、しゃがみ込むほどの突っ張りは減りました。

母と一緒に「どこを座ってやるか」を決められたのも、地味に嬉しかったんです。介助する側だけが姿勢を選ぶのではなく、母にも「今日はどうする?」と聞ける余白が残っている気がして。

風呂椅子に座って母の背中を洗う理学療法士の女性

壁に手をついて、片膝立ちで20秒

それでも完全にはなくならない突っ張りには、壁に手をついた片膝立ちのストレッチを続けています。

片膝を床につき、もう片方の足を前に出して体重を軽く前に預けます。後ろの膝側の股関節の前が伸びる感覚があれば、そこで止めて呼吸を2、3回。20秒ほどキープしたら、反対側も同じように行います。母の入浴介助を終えた直後、脱衣所でバスタオルを畳みながらでもできますし、夜勤に出る前の着替えの合間にも組み込めます。

最初はこの数十秒すら惜しく感じて、やらない日が続きました。仕事では当たり前に人に勧めていることなのに、自分のことになると後回しにしてしまう。そんな自分に気づいたのも、この股関節がきっかけでした。同僚に「最近しゃがむの遅くない?」と聞かれて初めて、自分の後回し癖を素直に認められた気がします。

「入浴介助のあと」「夜勤の着替えのあと」と、すでにある行動の直後に置くようにしてから、続けやすくなったんですよね。伸ばした瞬間に体が軽くなるというより、次に中腰になるときの「入り」が少しやわらぐ、そのくらいの変化です。

股関節の突っ張りは、たぶん体からの小さな合図なんだと思います。「同じ姿勢を、休みなく重ねすぎていますよ」という合図。忙しさに紛れて聞き流していると、その合図はいつの間にか聞こえなくなります。聞こえなくなった頃が、たぶん一番危ないんですよね。

休む許可を、股関節にも少しだけ出してあげてください。あなたは、入浴介助や移乗のあとで、体のどのあたりが突っ張りますか?

脱衣所の壁に手をついて片膝立ちのストレッチをする理学療法士の女性

理学療法士

#夜勤明け#股関節#入浴介助#家族介護#セルフケア
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介護現場で12年の理学療法士です。夜勤明けの介護職員さんと家族介護中の方の隣で、続けるための体の整え方を配信します。 責めない温度感で記載します。

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