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セルフケア2026年8月13日3分で読める

「見るだけでいいんですよ」とケアマネさんに言われた日、初めて施設見学に行った話

なかぴー@親の介護が始まった日のメモ
@family_care_life
「見るだけでいいんですよ」とケアマネさんに言われた日、初めて施設見学に行った話
目次

見るだけでいいんですよ、決めなくていいので。

先月、ケアマネさんにそう言われたとき、わたしは正直ぴんときませんでした。父はまだ家にいます。歩行器を使えば伝い歩きもできるし、デイサービスの日は将棋盤の前で機嫌もいい。そんな父を見学の対象として見に行くなんて、まだ早い気がしていたんですよね。

それでも火曜日、わたしは有給ではなく半休を選びました。理由は自分でもよくわかっています。有給だと「休みを取ってまで行った」という重みが残る。半休なら、午前だけ会社にいて、午後は普通の予定のふりができる。そのくらい、この一歩を軽く扱いたかったんです。

有給じゃなく半休にした、小さなこだわり

先月、夜中に三度目の物音で目が覚めた朝、わたしは自分の中に「目印」を決めました。夜中に呼ばれる回数、自分の睡眠時間、装具の着脱にもう自分の手が要るかどうか。三つとも、まだ超えていません。

だから今回は「決める」ためじゃない。そう自分に言い聞かせていました。でも本音を言うと、少しでも準備しておきたい気持ちも、たしかにあったんですよね。

ケアマネさんに相談したのは、その帰り道の電話でした。「一回、見るだけでも違いますよ」。いつもの、静かな声でした。決めさせようとしない言い方に、少し肩の力が抜けたのを覚えています。

半休にしたのは、この見学を「大ごと」にしたくなかったからです。午前中は普通に会議に出て、午後だけ抜ける。同僚には「私用で」とだけ伝えました。まだ、誰にも説明できる言葉を持っていなかったので。

半休を選んで施設見学に向かう朝の支度

聞くことを、あらかじめ三つだけ決めていった

施設は、父の家から車で二十分ほどの場所でした。ケアマネさんが候補として教えてくれた中の一つです。駐車場に車を停めてから、しばらくエンジンを切れなかったことを覚えています。

このまま入ったら、何か後戻りできない一歩を踏み出すような気がして。数分座って、メモ帳に書いておいた三つの質問を、もう一度指でなぞりました。

聞くことは、あらかじめ三つに絞っていました。ひとつ目は、体調が急に変わったときの受け入れ体制。ふたつ目は、費用の内訳。ここは通帳を整理してきた自分だからこそ、数字で聞いておきたい部分でした。みっつ目は、本人の意思をどう確認しながら生活を組み立てるか、という点です。

案内してくれた職員さんは、父と同じくらいの年齢の人が談話室で日向ぼっこをしているのを、通りすがりに「今日は良い天気ですね」と声をかけていました。特別なことじゃない、その普通のやり取りに、少しだけ気持ちがゆるんだのを覚えています。

質問の答えは、どれも丁寧でした。ただ、正直に言うと、内容よりも「ここで暮らす父」を想像しかけた自分に、一番動揺しました。想像した瞬間、なぜか謝りたいような気持ちになったんです。誰に謝りたいのかは、自分でもわかりません。

施設のスタッフとの説明を聞くメモの手元

父にも弟にも、まだ「決めた」とは言わなかった

見学から帰った夜、父の家に寄って、いつも通り明日の予定を確認しました。施設のことは言いませんでした。言えなかった、が正確です。

弟には、LINEで一行だけ送りました。「近くの施設、見るだけ見てきたよ。決めたわけじゃないから」。送信する前に、「見てきた」という言葉を何度か書き直しました。「検討してきた」だと重すぎる。「調べてきた」だと軽すぎる。ちょうどいい重さの言葉を探すのに、五分くらいかかったと思います。

弟からは「ありがとう、いつもお姉ちゃんに任せてごめん」と返ってきました。責めるつもりのない言葉でも、こちらが勝手に重く受け取ってしまう。そういう時期なんだと思います。

父には、まだ何も伝えていません。伝えるとしたら、決めるときではなく、選択肢の一つとして一緒に考えたいときだと思っています。ケアマネさんも「本人に話すタイミングは、ご家族のペースでいいですよ」と言ってくれました。

きょうだいへ短いLINEを送る夜の場面

見学は、答え合わせではなく、選択肢を増やす作業

帰り道、コンビニでいつものコーヒーを買いました。飲みながら思ったのは、見学は「在宅か施設か」を決める作業じゃなかった、ということです。むしろ、自分の手札を一枚増やす作業に近かった。

知らない場所は、想像の中では実際より重く見えます。一度見ておくと、次に判断が必要になった時、少なくとも「知らないまま怖がる」状態からは抜け出せます。最近は、怖がったまま止まるより、少しずつ知っておく方を選んでみています。

ケアマネさんには、来月また別の施設も見に行こうと思っている、と伝えました。決めるためじゃなく、知っておくために。急がず、でも目を逸らさずに。

帰り道にコーヒーを買う静かな一杯

施設のことを、まだ言葉にできずにいる家族は多いと思います。もし今、頭の片隅にだけその選択肢があるなら、まずは見に行くところから始めてみるのはどうでしょうか。決めるのは、そのあとで十分です。

#施設見学#ケアマネジャー#在宅介護
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