「その5つ、どう書けばいいの」と弟に聞かれた夜、きょうだいLINEの言い回しを渡した話
弟から「その5つ、実際どう書けばいいの」とLINEが来たのは、退院前カンファまであと4日という、月曜の夜10時過ぎでした。実家からの帰り道、車の中でスマホを見たら、既読のついたメッセージの下に、その一文だけが浮いていました。
以前、きょうだいだけのLINEグループを作った夜に、共有する情報を5つに絞ると決めた話を書きました。決めたのは項目名だけで、実際にどんな言葉で送ればいいのかまでは、あのときのわたし自身も手探りだったんです。弟に聞かれて、初めてそのことに気づきました。「項目は分かった、でも埋め方が分からない」。当たり前のことを聞かれた気がして、少し恥ずかしくなりました。同時に、自分が最初の夜にどれだけ手探りで打っていたか、久しぶりに思い出しました。
なかぴー、52歳、中堅メーカーの総務部で係長をしています。3ヶ月前、実家で一人暮らしをしていた父(79歳)が脳梗塞で倒れて、通い介護がはじまりました。今日は、あの夜に弟へ渡した言い回しと、家族会議のアジェンダまで、実際に使った言葉のまま書き残します。
窓口メッセージの言い回し集
最初に固定したのは、グループのいちばん上に貼っておく一文でした。
「病院・ケアマネさん・地域包括への連絡はわたしが窓口になります。読んだら了解のスタンプだけで大丈夫です。」
弟に聞かれて気づいたのは、この一文を作ったときの自分も、最初は「連絡は全部わたしがやります」というお願い口調で書いていたことでした。下書きを打っては消し、を3回くらい繰り返した覚えがあります。お願い口調だと、弟は毎回「ありがとう、任せてごめん」と謝る返信を書かなければなりません。窓口を役割として書くと、謝る場面がひとつ減ります。
役割はずっと固定じゃなくていい、と一言添えるのも忘れませんでした。
「この窓口、しんどくなったら言ってね。そのときは代わって。」
弟からの返信が3日止まった夜もありました。カーソルだけが点滅する画面を、何度か見つめました。催促の一文を打っては、指を止めたことも一度や二度ではありません。それでも既読無視と受け取らずにいられたのは、この宣言文を先に書いておいたおかげだと思っています。3日目に弟から届いたのは「ごめん、バタバタしてた。了解」の一言でした。それで十分でした。叔父や叔母のグループには、もう少し柔らかく「何かあれば、まずわたしに連絡いただけると助かります」とだけ送っています。宛先によって温度を変えていい、というのも、今回弟に伝えたことのひとつです。

5項目の埋め方テンプレ
項目名だけでは弟も埋め方に迷うと分かったので、空欄付きのテンプレを作って送りました。
①病名と主治医「(病名)で、主治医は(名前)先生」 ②現在地と面会ルール「(病院名) (階)病棟、面会は(曜日・時間)」 ③今わかっている見通し「(内容)、と先生に聞いた」 ④退院後の選択肢「在宅・転院・施設の3つ、まだどれとも決めていない」 ⑤次の家族会議「(日付) (時間) LINE通話で(分数)」
弟は最初、③のところで手が止まったそうです。「見通しって、どこまで書いていいか分からない」と。わたしも最初は同じところで迷いました。最初に書いた下書きは「来週また検査して、それで転院が決まる」でした。見返すと、これだと確定情報に見えます。「来週もう一度検査して、それを見てから転院の話が出るかもしれない、と先生に聞いた」と書き直しました。語尾ひとつで、読む側が抱く不安の重さが変わる気がしています。
①も、最初の下書きでは薬の名前まで細かく書いていました。でも読み返して、家族が薬の細部を書き始めると、かえって誤解の元になると気づき、病名と先生の名前だけに削りました。④も、最初は「たぶん在宅になると思う」と書きかけて、あわてて消しました。決めていないことを、決めたように書かない。これだけは、弟にも同じように伝えました。⑤は迷う要素が少ないので、弟もすぐに「土曜21時、LINE通話で30分」と埋められていました。空欄を5つとも同じ重さで扱わなくていい、というのも、テンプレを渡してみて分かったことでした。

お金の話、段階別のメッセージ例
急性期のあいだ、弟からお金の話を振られたときは、こう返すと決めていました。
「それはまだ早い。退院の見通しが立ってから、ちゃんと家族会議で。」
短く、素っ気ないくらいでいいと思っています。この段階で長く説明すると、かえって不安をあおるからです。退院前カンファの1週間前になったら、今度はこちらから予告を出します。
「来週のカンファで、退院後の場所と、当面のお金のざっくりした見通しを話したい。金額の細かい話は、その次の家族会議で。」
実際に金額を話す家族会議は、文字ではなく声でと決めていました。理由は単純で、文字だと後から読み返すたびに、その時の数字だけが独り歩きしてしまう気がしたからです。一度、弟から「金額くらいLINEでいいのに」と言われたことがあります。そのときは「声のほうが、お互いの表情とか間とか、多く伝わる気がして」とだけ返しました。理屈より感覚の説明でしたが、弟は「まあ、それもそうか」と納得してくれました。話し終えたその夜のうちに、決まったことだけを短くLINEに書きました。
「今日決まったこと。通帳はわたしが管理、月々の分担は今の暮らしを見てからまた相談、で合意。」
金額そのものは書きません。決まった枠組みだけを書く。声で話した内容を、あとから文字でひっくり返されることが一度もなかったのは、この順番のおかげだと思っています。

弟との家族会議、30分のアジェンダ
弟と初めて開いた家族会議は、LINE通話で30分の予定でした。実際には45分近くかかって、最後は二人とも少し疲れた声になっていました。それで2回目からは、始める前にタイマー代わりの時間配分を送るようにしました。
最初の5分は、父の今の状態と、最近あった小さな変化。ここを飛ばすと、弟がいきなり決め事の話から始まる感じがして冷たく感じるようです。次の10分で、5項目のうち更新が要るところを共有します。次の10分は、今回決めることをひとつだけに絞って話す時間。退院後の場所か、当面のお金の枠組みか、欲張らずどちらか片方です。最後の5分で、次回の日程と、困っていることの言い出しをします。
10分で決まらないこともあります。そのときは無理に結論を出さず、「次回の頭で続きをやる」とだけ決めて終わります。一回で全部決めようとしないことが、続けるコツでした。「今日はここまで」とわたしから区切ると、弟も安心して電話を切れるようです。最近は弟のほうから「そろそろ30分回か」と、会議の予定を提案してくれるようになりました。窓口を一人で抱えていた頃には、なかった変化です。
言い回しやテンプレは、あくまでわたしたちきょうだいに合った形です。ご家庭によっては、もっと短い一文で十分な場合もあると思います。
医療や制度の判断は主治医・地域包括支援センター・ケアマネさんに確認してください。金額や分担の細かい取り決めで迷うときは、司法書士さんなど専門家にも相談してみてください。

あなたの家では、きょうだいへの言葉を、誰がどんな順番で選んでいますか。
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