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介護福祉けありんぐ
現場スキル2026年5月23日

転倒を防ぐ!新人が知るべきリハビリ視点

けあむらPT
けあむらPT認定コラムニスト
@care1129
転倒を防ぐ!新人が知るべきリハビリ視点

はじめに:転倒予防の新しい扉を開けよう

新人リハビリスタッフの皆さん、毎日の業務お疲れ様です。新しい環境の中で、患者様や利用者様お一人おひとりと向き合う日々は、とても充実している一方で、多くの課題にも直面していることと思います。

リハビリの現場で、私たちが最も頻繁に直面し、かつ頭を悩ませるテーマの一つが「転倒予防」です。先輩スタッフから「あの担当の患者様、転倒リスクが高いから気をつけてね」と言われても、具体的にどうアプローチすればよいのか戸惑うことも多いのではないでしょうか。

かつての転倒予防は「筋力を鍛えて、足腰を強くする」というアプローチが主流でした。しかし、近年の研究やリハビリ現場の知見からは、単に筋力を高めるだけでは転倒を十分に防ぐことは難しいことが分かってきています。今回は、最新の転倒予防の考え方について、新人スタッフの皆さんが明日からの臨床で実践できる具体的な視点をお伝えします。少し肩の力を抜いて、一緒に学んでいきましょう。

なぜ今「最新の転倒予防」なのか?

「筋力はあるはずなのに、なぜか転んでしまう」「歩行訓練ではきれいに歩けているのに、お部屋に戻るとふらつく」といった場面に出会ったことはありませんか。これこそが、従来の筋力トレーニングだけでは解決できない転倒の難しさを示しています。

最新の転倒予防において重要視されているのは、身体機能だけでなく、認知機能、環境、そして「心理面」や「行動パターン」までを含めた多面的なアプローチです。人間が歩くとき、脳は周囲の状況を瞬時に判断し、次の動作を予測しながら体を動かしています。つまり、転倒予防とは単なる「運動器のリハビリ」ではなく、「脳と体の連携をスムーズにするリハビリ」であると言えます。

この視点を持つことで、評価の仕方が変わり、アプローチの幅がぐっと広がります。患者様が「なぜ転びそうになるのか」の真の原因を探る旅に、一緒に出発しましょう。

評価から始める:多角的な視点を持つ

適切なアプローチを行うためには、まず丁寧な評価が必要です。新人スタッフの皆さんが意識しやすいように、4つのポイントに整理して解説します。

1. 身体機能の評価(バランスとステップ反応)

筋力(特に下肢筋力や体幹筋力)の評価はもちろん大切ですが、それ以上に「バランスが崩れたときに、とっさに足が出るか」というステップ反応(立ち直り反応)を評価することが重要です。静止しているときのバランスが良くても、動いているときや、不意にバランスを崩したときに足が一歩出なければ、転倒につながってしまいます。

2. 認知機能と注意の分配(デュアルタスク)

私たちは普段、無意識のうちに「話をしながら歩く」「障害物を避けながら歩く」といった複数の動作を同時に行っています。これを「デュアルタスク(二重課題)」と呼びます。高齢になると、この注意の分配機能が低下しやすくなります。歩行の評価をする際は、ただ歩いてもらうだけでなく、「100から順に7を引いていきながら歩いてみてください」といった課題を提示し、歩行スピードやバランスがどのように変化するかを観察してみましょう。

3. 環境因子と行動パターン

リハビリ室という「整理整頓され、手すりがあり、明るい環境」では上手に歩けても、ご自宅や施設の居室には、じゅうたんの段差、コード類、薄暗い照明など、多くの危険が潜んでいます。また、「トイレに間に合わないと思って焦って動いてしまう」「自分の力を過信してしまい、介助を呼ばずに動く」といった心理的・行動的な要因も大きな転倒リスクです。本人の性格や、どのような場面で焦りやすいかを把握することも大切な評価です。

4. 内服薬の影響(ポリファーマシーへの気づき)

複数の薬を服用していること(ポリファーマシー)が、ふらつきや立ちくらみを引き起こし、転倒リスクを高めることがあります。特に睡眠薬、抗不安薬、降圧薬などは影響を与えやすいとされています。リハビリスタッフが直接薬を調整することはできませんが、「最近、薬が変わってからふらつきが増えた気がする」といった気づきを医師や看護師、薬剤師に共有することは、非常に重要な役割です。

明日から使える!最新のリハビリアプローチ

評価のポイントが整理できたら、次は具体的な介入方法です。リハビリ室だけでなく、日常生活の場面を意識したアプローチを取り入れてみましょう。

デュアルタスク・トレーニングの実践

歩行やバランス訓練の中に、あえて「頭を使う課題」を組み込みます。これにより、日常生活に近い状態での注意分配能力を鍛えることができます。

  • 初級編:足踏みをしながら、しりとりをする。

  • 中級編:歩きながら、1から順に数を数え、「3の倍数」のときだけ手を叩く。

  • 上級編:トレイにボールを乗せて、落とさないようにバランスを取りながら障害物を避けて歩く。

このトレーニングを行う際は、安全確保を最優先にし、セラピストが必ずすぐ近くでサポートできる体制で行ってください。ゲーム感覚で楽しく取り組むことが、モチベーション維持の秘訣です。

ステップ反応を促すバランス訓練

予測できない揺れや刺激に対して、素早く足を一歩踏み出す練習を行います。

  • 前後左右へのステップ練習:セラピストの合図(「右!」「後ろ!」など)に合わせて、素早く指定された方向に足を一歩踏み出し、元の位置に戻る訓練です。

  • バランスディスクやクッションの使用:不安定な足場の上で立つ、または足踏みをすることで、足底からの感覚入力を促し、深部感覚を刺激します。

心理面への配慮と「動きたい」気持ちの尊重

転倒を恐れるあまり、活動性を下げてしまうことは逆効果になることがあります。「転ぶから歩かないでください」と制限するのではなく、「どうすれば安全に歩けるか」を一緒に考える姿勢が大切です。患者様が「自分でできた!」という達成感を得られるよう、スモールステップで目標を設定し、自信を取り戻せるようサポートしましょう。

多職種で守る!チームアプローチのコツ

リハビリスタッフが患者様と接する時間は、1日のうちのほんの一部です。残りの多くの時間は、病棟や施設、あるいはご自宅で過ごされています。そのため、転倒予防を成功させるためには、他職種との連携が欠かせません。

1. リハビリでの「できるADL」を病棟の「しているADL」へ

リハビリ室で歩行器を使ってきれいに歩けていても、病棟では車椅子移動になっている、というギャップはよく起こります。看護師や介護職に対して、「リハビリ室ではこれくらい歩けています」「この部分を少し介助すれば、安全に歩行器で行けますよ」といった具体的な情報を共有しましょう。実際に病棟のスタッフと一緒に歩行の様子を確認するミニカンファレンスを行うのも効果的です。

2. 介護職からの情報をリハビリに活かす

「夜間にトイレに行くとき、すごくふらついている」「夕方になると、そわそわして歩き回ってしまう」といった情報は、24時間生活を共にしている看護・介護職だからこそ気づける貴重な視点です。これらの情報をリハビリのプログラムに反映させ、夜間のふらつきに対応するための筋力維持や、夕方の疲労度を考慮したリハビリのスケジュール調整などを行います。

おわりに:一歩一歩、一緒に成長していきましょう

転倒予防に「これさえやれば絶対に転ばない」という魔法のような解決策はありません。患者様一人ひとりの人生や生活環境、心身の状態によって、最適な答えはすべて異なります。

新人スタッフの皆さんは、最初から完璧なプログラムを立案しようと焦る必要はありません。大切なのは、患者様の「普段の様子」をよく観察し、「どうしてここでつまずいてしまうのだろう?」と疑問を持つことです。その疑問を先輩スタッフや他職種に相談し、みんなで知恵を出し合うことが、最も質の高い転倒予防につながります。

皆さんの真摯に向き合う姿勢そのものが、患者様や利用者様にとっての大きな安心感になります。失敗を恐れず、日々の小さな変化を楽しみながら、一歩一歩進んでいきましょう。皆さんのこれからの活躍を心から応援しています!

#転倒#リハビリ

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