現場ノウハウ
腰痛を防ぐ移乗介助のコツ — ボディメカニクス7原則で身体を守る
執筆: けありんぐ編集部(介護福祉けありんぐ 編集部)
腰痛を防ぐ移乗介助のコツ — ボディメカニクス7原則で身体を守る
介護職の離職理由として、毎年上位に挙がる 腰痛。厚生労働省の調査では、介護労働者の約 7割 が腰痛経験者というデータもあります。本記事では、自分の身体を守りながら質の高いケアを続けるための基本技術をまとめます。
そもそも、なぜ介護職に腰痛が多いのか
主な原因
- 持ち上げ介助 による急激な負荷
- 前かがみ姿勢 の反復
- ねじり動作 を伴う無理な体勢
- ひとりで抱え込む 心理的ストレス
「持ち上げない介護」への転換
近年は、福祉用具を活用してできるだけ持ち上げない ノーリフティングケア が標準になりつつあります。まず前提として覚えておきたい考え方です。
「介護職が身体を壊して現場を離れることは、利用者にとっても大きな損失」という視点が重要です。
ボディメカニクス7原則
身体の使い方の基本原則です。すべて覚える必要はなく、3つだけでも意識する と負担が大きく減ります。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 1. 支持基底面を広く | 足を肩幅以上に開いて安定させる |
| 2. 重心を低く | 膝を曲げて腰を落とす |
| 3. 重心を近づける | 利用者と自分の重心の距離を縮める |
| 4. 大きな筋肉を使う | 腰ではなく足腰や腹筋を使う |
| 5. てこの原理を使う | 支点を意識して小さな力で大きな動きを |
| 6. 水平移動を基本に | 持ち上げずに、滑らせるように動かす |
| 7. 身体をねじらない | 足先から向きを変える |
ベッドから車椅子への移乗 基本手順
準備
- 車椅子は 利用者の健側 に、ベッドと15〜30度の角度で配置
- ブレーキ・フットレストを必ず確認
- 声かけで合意を取る
実施の流れ
- 端座位 を安定させる(足は床にしっかりつく高さ)
- 利用者の 両腕を介助者の肩 に回してもらう
- 介助者は利用者の背中に手を回し、膝と膝を合わせる
- 「いちにのさんで立ちますよ」と声をかけ、前方に重心移動
- 立ち上がったら 足先から方向転換(ねじらない)
- ゆっくり座位へ
現場で使える小ワザ
スライディングシートを常備する
- 体位変換が 1/10の力 でできると言われます
- 1枚あれば夜勤の負担が劇的に変わります
「一緒に立ちましょう」の声かけ
「持ち上げる」ではなく「一緒に動く」という意識。利用者の 残存機能 を活用することで、双方の負担が減ります。
ペア介助を遠慮しない
- ひとりで抱え込むのは事故と腰痛の元
- チームで動く文化作りが、結果的に全員を守ります
腰痛が出てしまったら
初期対応
- 無理せず ペア介助や福祉用具に切り替える
- 痛みが続く場合は早めに整形外科へ
予防のための日課
- 勤務後の 5分ストレッチ(腸腰筋・ハムストリングス)
- 体幹トレーニング(プランク30秒×2セット)
- 睡眠時間の確保
まとめ
ボディメカニクスは、知識としては多くの方が学んでいます。しかし、現場で無意識に実践できる ようになるには反復が必要です。
同じ現場で働く仲間の工夫や、「自分はこうしている」という知見は、他施設でもそのまま使える実践知。ぜひ 介護福祉けありんぐ でシェアし合いましょう。